『マップス』3巻(長谷川裕一・メディアファクトリー)の感想
コミック『マップス』3巻(長谷川裕一・メディアファクトリー)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
心臓をぶち抜かれて死んだはずのゲンが、生き返って戻って来た、という、2巻の終わりの衝撃の展開から、3巻が始まります。
ラドウやあの宿敵との戦い、ちょっとギャグ回、伝承族とは別の強敵が現る! と、3巻も息つく間もない、パワフルなお話です。
収録作品は、次のとおり。
六人の幽霊船編
ACT.19 黒い炎
ACT.20 眠る記憶の間で
放浪編
ACT.21 銀河をつかむ男
ACT.22 暗殺者
ACT.23 罠
ACT.24 溝
ACT.25 両天秤
ACT.26 星見ちゃん、気をつけて
龍のとりこ編
ACT.27 このましからざる再会
ACT.28 イヴから生まれたアダム
では、あらすじを説明いたします。
「六人の幽霊船編」の続き。爆発の衝撃で、レインがラドウのコントロールから自由になり、本来の彼女に戻ります。シアンもまた、ラドウを不審に感じて離反。ダインは逃走し、ラドウVSリプミラ&リムの戦いに。ラドウは、惑星をも破壊する最大の武器、星の涙(スター・ティア)をレインごと発射します。星の中心に突入するリプミラは、レインと接するうちに、彼女の記憶の中にいた記憶である、亡き宇宙海賊カリオンの姿と出会います。そこで、リプミラは彼と語って、六人姉妹だった頃の最古の思い出、カリオンとの出会いを思い出すのでした。
奮起したリプミラは、リプミラ号で脱出、ゲンやリムも苦戦していたラドウを、星の涙によって逆襲し、彼方へ吹き飛ばします。けれども、特にかよわいレインは再生できず、リプミラに抱かれて死亡(結構悲しい場面でした)。
「放浪編」、ゲンとリプミラ達は、ザザーンとともに惑星ドドーに向かい、星見と再会しますが、星見はゲンの左胸の大きな傷あとに驚き、問い詰めます。
ようやく、ゲンは、惑星リングロドの意志たる「オヤジ」によって、数光年先に転送、粒子レベルに分解された後、再構築されて助かったのだと、種明かしをしたのでした。
ドドーでは、大勢の各国大使が集まっており、ゲンは到着早々、彼が銀河の伝説の英雄、ダイナックであるのか、また、“十匹の魔物”、“七つの軍団”について質問されます。ゲンは、自分がダイナックであると肯定し、会場は大いに沸き立ちました。
しかし、ゲンは肝心なことを話していなかったのです。自分がダイナックになること自体、伝承族の計画。伝承族は銀河が統一されて、皆が意気上がった後で、その希望を打ち砕き、恐怖、怨念、絶望を、銀河砲の破壊力に変換するのが、真の狙いでした。
ここで、惑星ザザーンの指導者の一人、アババは、「伝承族のワナであるなら、銀河は統一しない方がよい」と断定して、ゲンとリプミラを攻撃してきますが、船体もろとも髪型までリニューアルしたシアンが加勢して、ゲン、リプミラ、シアン、リム、エイブ、星見ら一行は無事に脱出しました。
商売をするかたわら、“さまよれる星人”の残り2枚の星図を探すゲン達ですが、惑星ドドーとつき合いのあるテュリオム通商圏とは別の、未確認宙域の探査を始めます。が、メザラル星のビメイダー・ハンター、ゾロンという、飛び回る数千の手を持つ傭兵によって船内に侵入され、リムが拉致され、船も奪われてしまいます。
ゾロンの雇い主が、ガッハ・カラカラ(またか!)。彼はリムと船を引き換えに星図を渡すよう、“龍の肋骨”という無人観測衛星まで来いと、命じます。そこで、ゲンは皆を危険に巻き込まないため、単独で向かい、彼の独断行動を予測したリプミラとシアンが、後を追うのでした。
“龍の肋骨”では、ゲンはガッハの数々のトラップに、リプミラとシアンは、ゾロンの、飛行する無数の手足の攻撃に大苦戦。リプミラは、ゾロンが蜂に似た生命体で、体を統一する女王首を探し、それが“フェロモン”によって手足をあやつっていることを察知して反撃、勝利しました。
しかし、“龍の肋骨”は、リプミラ号らの船体の重みで、太陽へ落下する危険が生じてしまいます。これもまた、ガッハの罠。ガッハは、石のような生き物であるケイ素生物で、大昔から、炭素系生物の他惑星生命体によって、ロボット代わりに酷使され、使い捨てにされてきた、その恨みを晴らすため、死の商人になったのですが、彼らカミオ星人を支援するゲンを受け入れられず、やり場のない怒りを向けた、というわけでした。
そんなガッハと、ゲンは、ついに対峙します。星図を渡すゲン。とらわれているリムは、実は爆弾。緊張の走る中、エイブと星見が、テレポートで出現し、爆発の衝撃から、ガッハの部下、ロジュルが身を挺して皆を守りますけれども、ガッハは、あくまで憎悪を向け続けます。なぜなら、星図は、惑星リングロドから、仲間の命を犠牲にして譲り受けたものだから。が、同じく、リングロドによって並外れたパワーを手に入れたゲンは、ガッハの攻撃をはねのけます。さらに、壁の破れ目から宇宙空間へ、空気が猛烈な勢いで吸い出されていき、ガッハは自棄になって死ぬつもりでいましたけれども、ゲンは、星見に続いて、ガッハ、ロジュルまでも救います。ゲンが力尽きた瞬間、リプミラ達によって助けられます。ガッハは敗北を認め、ゲンに星図を譲ったのでした。
次は、ツキメの生まれ故郷である超高重力惑星ジャンバで、星見は何と、彼に求婚されます。反対する一派と、リプミラ達も交えて大騒動になりますが、星見は危ないところをゲンに助けられます。本命はリプミラですけれども、リムも好いていますし、モテモテですな、ゲン。
「龍のとりこ編」、ゲン一行は、ザザーンと合流します。ザザーンの仲間に、ダインが加わっており、驚く一同。ザザーンは、味方だと言い張り、惑星ヨッペへ案内します。そこは、ワインの海で満たされており、皆は酔っぱらってしまいますが、リプミラは何者かの接近を察知します。相手は、ダード・ライ・ラグンという青年。240年前にリプミラと出会い、彼女が誘いこんだ中性子星団の重力結界を破り、到来したのでした。
ダードもまたビメイダー。しかしながら、ライ族がリプミラのデータや遺伝子を複製し、宇宙船のつがいとして、“男”に変化させたもの。
互いに進化する船になろう、二つの能力をあわせ持つ子孫を造ろうと、ダードは提案しますが、リプミラは当然拒絶、争いになります。リプミラは、星の涙で一気に片を付けるつもりでしたが、ダードの船体は巨大な龍。しかも、たやすく星の涙を受け止め、逆にヨッペへ落下せせると脅迫します。やむなく、リプミラは従い、ダードにとらわれの身となります。
けれども、ダードは、約束を守るつもりなぞ、ありませんでした。彼は五千機の海賊船で、リプミラの仲間を殲滅するつもりでいたのです。シアンとザザーンは果敢に迎撃するも、数が多くて、手が回り切れません。船体ごと、ダードに連れ去られるリプミラ。そのダードの巨大な船体に、ゲンはしがみつき、もろともに宇宙へ……。
ランダムに感想を記していきますね。
まず、あらすじでは省略しましたが、ダインは反省なんぞ、しておりません。リプミラ本人では、かなわないから、ゲンをねらうという、実に姑息なやり方。それなのに、ゲンにあっさり看破され、ギャグっぽくなってしまいました。ラドウの極悪美女っぷりと対照的な、ダインの小悪党感。こういうタイプは、割とねちっこくて、リプミラは苦戦するかも。
ねちっこいと言えば、やっっと、ガッハは敗北を認めましたね。本当に、初登場時には、にぎやかしかギャグ担当、もしくは、すぐに消えていなくなるのではないかと、私は想像しておりましたが、この強烈な存在感は意外でした。しかも、彼の生贄砲は、元来、伝承族の、銀河をも滅ぼす、強力兵器であるようです。すごい伏線ですな。
そんなガッハを愛していると、ロジュルという別の大メロン、いや、カミオ星人は、ゲンに告げます。ロジュルは女性! だったのです。割と、美女美少女ぞろいのこの漫画にあって、なかなかのファニーフェースで、仰天しました。
それとは裏腹に(腐女子的涙)、作中に登場するイケメンは、ガタリオンもそうですが、ダード・ライ・ラグンもまた、悪役のようで……。ゲンは偏見の少ない、いい少年ですが、外見がニ・五枚目であるから惜しいです。この作品、シアンやリム、星見のような美少女満載(しかも、規制の多い今より少し以前のせいか、脱いだり、露出したりが多いような?)だから、SFとは別の、男性ファンは多いでしょうね。
シアンは、リニューアル前のヘアスタイルの方が、私の好みです。今のは、重たそうな、ヘルメットみたいに見えますわ。残念!
最後に、ゲンは、両手に花というか、リプミラだけでなく、星見ともキスしたり、せまられたりしています。いい加減に、バチが当たるぞ! そして、星見はツキメに求婚され、酔っ払いまみれの大宴会が始まり……と、萌え系のゆるゆる展開から、ダード出現、星の涙が通用しない、リプミラがさらわれると、作者様はストーリー展開を実に巧妙になさっておられると、私は思います。もちろん、演出のうまさもありましょうが、人物の描き方がギャグとシリアスで、あまり変化がないため、読み手側は先を予測できないからではないかと、読んでおりますが。一介の創作する者として、この見事な構成力は大いに参考になりますし、読みながら、勉強しているところです。お勧めいたします。それでは。
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