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2024年6月22日 (土)

『ポムレー路地』(マンディアルグ 生田耕作/訳 奢灞都館)の感想

 書籍『ポムレー路地』(マンディアルグ 生田耕作/訳 奢灞都館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 作者様、翻訳者様(さらに出版社様も)が同じでありながらも、前回の『1914年の夜』とは、作風がガラリと異なります。いやぁ、本当に、いい意味でやられてしまいました。私、心から精神的土下座をいたします。

 簡単にあらすじを申しますと、ナント市を訪れた「私」は、好奇心のおもむくままに、ポムレー路地に足を踏み入れます。古式ゆかしい? 謎めいた廻廊、奇怪な彫刻群、さらには有用か無用か、判断のつきかねる陳列窓(ショーウィンドー)の多くの品々に目を奪われますが、いつの間にか、一人の美女が近づいき、見つめられていることに気づきます。彼女は、「エシイドナ」と叫んで、歩み去るのを、私は追っていきます。袋小路の奥にある一軒の家の最上階で、彼女に追いついたものの、そこには、見たことのない奇妙な生き物がいました。「自分の番が来たのだ」と、私はつぶやき、手術台に歩んでいきました。
……という手稿が、ナント市の淫蕩な地区で発見され、その書き手なる者は……。

 作中に、何枚も差しはさまれた、19世紀末か20世紀初頭頃の、古めかしい白黒写真が、よい効果をかもし出しています。
 不気味で、先が見通せず、運命に任せるしかない、おどろおどろしい雰囲気たっぷりです。



 欧米の人であれば、「昔の写真ね」と、スルーできるのでしょうか?
 世界の歴史にうとい私だからこそ、エキゾチックでロマンも感じる、けれども、一歩ずつ、破滅への転落坂というか、運命の袋小路に向かって、自ら突き進んでいるように思えてしまいました。
 それにしても、暗いっぽいのに、ムードたっぷりで、美しいのは、なぜなのでしょうね?
 発行は1988年8月で、古い本で、しかも、定価が2,000円以上する、本文は約60ページ、写真がはさまれているゆえに、もっと短い内容なのでしょうね。なのに、百ページくらいの作品のように思わされたのは、作者様の持つ、語彙の豊富さと、文章によるイメージ再現能力が高いためではないかと、思います。
 作品のボリュームとしては今一歩で、やや高額なほんですが、休日のひとときの読書に、お勧めいたします。それでは。


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