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2024年6月15日 (土)

『ドグラ・マグラ』上・下(夢野久作・角川文庫)の感想

『ドグラ・マグラ』上・下(夢野久作・角川文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 実は、感想をアップする予定だった本を読了できなかったため、急遽、大昔に読んだこれらの本についてご紹介いたします。
 読むのが遅くて、すみませぬ!

 あらすじとしては、ある青年が、真夜中に、ボンボン時計の物音で目を覚まします。が、彼には記憶が、一切ありません。彼の叫び声に応じて、一途で清純そうな少女が呼びかけるのですけれども、彼女が誰なのかもわからないのです。ショックを受けたまま、青年は朝を迎えます。食事と衣服を与えられて落ち着いた頃、九州帝国大学法医学の若林教授という奇怪な紳士が面会にやって来ます。そこで、若林教授は、青年が、正木敬之教授の精神科の治療を受けており、記憶を取り戻すことが何よりも大事であると、話して、様々な恐ろしげな研究成果を見せるのでした。
 その中には、「ドグラ・マグラ」という小説も入っていました。青年は、正木博士の膨大な論文を読み始めます。
 ようやく読み終えた時、目の前には、正木博士がいるではありませんか。
 それは、はるか昔の中国にいた頃のある絵師から受け継がれた、殺人と死体翻弄の、恐るべき「胎児の夢」のなせる技だったのです。

 うぅ、もっと書きたくとも、推理小説ですので、ネタバレ防止のため、ここまでで精一杯です。
 すでに、主人公の青年が、記憶と幻想の中で、必死に真相を突き止めようとしているのですが、堂々巡りの迷路に入りこんでいるわけで、下巻で明らかになる凄惨な殺人事件を理解するのは困難です。

 ゆえに、読者としては、この作品のダークで血なまぐさいイメージ(幻覚?)を想像し、味わうことに、魅力があると、思います。
 しかし! この作品でうわさされているような、精神に異常を来した方は、本当にいらっしゃるのでしょうか?
 私は何人かの読書好きさんにたずねてみましたが、「エグくて、グロかったけど、ぜーんぜん」という人ばかりでした。
 かく言う私は、読書中、毎夜、悪夢にうなされておりました。特に、読了直後は、全身冷や汗ものでした。
「精神に異常を来すとは、本当か?」と、疑問を述べておきながら、悪夢にうなされ続けた私って……。
 とにかく、この小説ほど、ダークで怖いイメージが湧き上がるものは、今のところ、ラヴクラフトの小説以外にありませぬ。
 それだけでも、読む価値があると、私は思います。
 でもね、角川文庫の表紙イラスト、少し恥ずかしいデザインですし、内容とあまり一致していないですなあ。それでもよろしければ、どうぞ、読んでみてくださいませ。

 ところで、私、この小説の上巻、ほんの出だしのところが、とても気に入っております。
 記憶のない主人公が、開き直って、大笑いした後、空腹に見舞われて、看護師から強引に受け取った朝食を食べる場面です。
 少し長いですが、引用させてもらいます。

 そうして眼の玉をコスリまわしながらよく見ると、すぐ足の爪先のところに、今の騒動のお名残りの三切れのパンと、野菜の皿と、一本のフォークと栓をしたままの牛乳の瓶とが転がっている。
(中略)右手を伸ばして、生温かい牛乳の瓶を握りつつ、左手でバタを塗りたくったトーストパンをつかんでガツガツと喰いはじめた。それから野菜サラダをフォークに突っかけて、そのトテモたまらないお美味しさをグルグルと頬張って、グシャグシャとかんで、牛乳と一緒にゴグゴクとのみ込んだ。

 ええ、何の伏線にも解決にもなっていない、ただの食事です。けれども、これから精神の暗い謎と対決する主人公のパワーの源として、シンプルながらも、実においしそうに感じられてなりませぬ。
 後編では、たくさんのカステラとお茶という組み合わせもあって、それも悪くありませんが、私はこちらが好きです。妙な読み方、楽しみ方ですが、お気に召した方、コメントやツイッターで、ぜひお伝えくださいませ。それでは。

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