« 『オール・アバウト・セックス』(鹿島茂・文春文庫)の感想 | トップページ | 『ポムレー路地』(マンディアルグ 生田耕作/訳 奢灞都館)の感想 »

2024年6月19日 (水)

『1914年の夜 アール・ヌーボー調』(A・P・マンディアルグ 生田耕作/訳 奢灞都館)の感想

 書籍『1914年の夜 アール・ヌーボー調』(A・P・マンディアルグ 生田耕作/訳 奢灞都館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 こちらは、ある講演会の後、購入させていただいた奢灞都館の本です。しかも、エロくて幻想的な作風のマンディアルグの作品で、生田耕作の翻訳でしたので、小躍りしてしまいましたよ。
 奥付によれば、1979年4月初版で、装幀はアルフォンス・イノウエ。30ページほどの短編ながらも、化粧箱入り。その箱こそ、元々アイボリーだったのが日焼けして薄茶色に変色していますが、中の本にダメージは、ほぼゼロ。奇跡のような本を入手したなあと、思わず、抱きしめました。
「お願い、おもしろい内容でいてね」と、念じながら、読み始めたわけです。

 少しだけ、あらすじを申しましょう。
 語り手の「私」は、イギリス女性のレリアと恋をし、ホテルのテラスで陶然と、ワルツを踊ります。夢のように美しい夜。イタリア、レマン湖、ホタルと、様々な美しさと、繊細なイメージが交差していきます。醜い情欲的なものも。私はあえて、昼間に見た、ジュネーヴ新聞の見出しを忘れようとし、ただひたすら、夢幻の中へ……。


 このタイトルと、暗殺事件を報じた新聞の見出しから、レリアや私のいる世界が、どんなにもろいものだるか、その恐るべき未来が予測されるでしょう。
 それだけに、イメージがはかないほどに美しく、偶然にも(?)、世界を揺るがすあの出来事に関与している国々のことが、頻出しています。
 私が深読みさせていただいた感じでは、いわゆる世界の危機というだけでなく、心ゆくまで美に囲まれ、味わうことのできた時代の、最期の輝きのようにも思えました。もう、これからは、大量生産の均一した物であふれ返り、時間に追われて、短い人生がまたたく間に終わる、空虚な時をすごさなくてはならなくなる、ような。
 読むほどに、メランコリーとノスタルジーがあふれてくるようです。
 そのような効果をあげてくれるのは、やはり、すぐれた装幀にあるのではないかと、私は思います。
 奢灞都館の本は、元々高額ですし、少部数発行ゆえに見つかりにくいです。それでも、いい状態で納得できる価格の本があれば、一度、お手にとってみることをお勧めいたします。それでは。



ご協力お願いします。

読書感想ランキング

| |

« 『オール・アバウト・セックス』(鹿島茂・文春文庫)の感想 | トップページ | 『ポムレー路地』(マンディアルグ 生田耕作/訳 奢灞都館)の感想 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 『オール・アバウト・セックス』(鹿島茂・文春文庫)の感想 | トップページ | 『ポムレー路地』(マンディアルグ 生田耕作/訳 奢灞都館)の感想 »