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2024年8月 3日 (土)

『チャタレイ夫人の恋人 シネマ・フォト・ストーリィ』(D・H・ロレンス 富士見書房編 富士見ロマン文庫 No.61)の感想

『チャタレイ夫人の恋人 シネマ・フォト・ストーリィ』(D・H・ロレンス 富士見書房編 富士見ロマン文庫 No.61)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 サブタイトルに、「シネマ・フォト・ストーリィ」とありますとおり、映画のノベライゼーションのようで、この本はカラー、白黒含めて、エロチックというか、セクシー系の写真がかなり多いです。
 それから、「富士見書房編」と記されていますが、あとがきによりますと、翻訳者様は飯島淳秀、角川文庫版のものを、富士見ロマン文庫のボリュームに合わせて編集部が圧縮し、また、飯島氏が一部新たな訳を加筆したそうです。
 あまりくわしくない私でも、この作品がセンセーショナルなものだと知っておりましたが、上記の都合で、完訳というわけではなさそうです。少し、がっかり。けれども、まあ、繰り返しますが、表と裏、両方の表紙に使われている写真も含めて、色っぽいです。

 簡単に、あらすじをご紹介いたしましょう。
 チャタレイ夫人=本名コンスタンス、愛称コニーは、夫のクリフォードが戦争のために下半身不随で戻ってきてから、満たされたない日々を送ります。貴族階級ゆえに金銭的には不自由はないものの、煤煙にけむる街を見ながら、コニーは小説を書き続ける夫に放置され、身も心も衰えていくのでした。
 そのような日々を送るうちに、コニーは猟場番のメラーズが体を清めているのを偶然に見かけ、心を乱されます。興味を持って、メラーズに接近しますが、彼は性悪な妻との関わりで疲れていたのと、身分違いのために、ひどく警戒します。けれども、一途で熱心なコニーの言動に心動かされ、抱擁し、二人は密会を繰り返すようになり、やがて、コニーは妊娠したことを悟ります。コニーは喜び、メラーズと愛ある生活を送るため、夫のクリフォードに離婚を要求します……。

 以前に、川崎三枝子の漫画で『チャタレイ夫人の恋人』を読んでいましたから、ラストのゴタゴタぶりには、驚かされました。いやぁ、クリフォードは決して許しません。メチャクチャ、ねちっこいです。
 いわゆる、最後に愛は勝つ! というお話ですから、後味は悪くありませんし、愛のない結婚生活に耐えるしかない、コニーの悲しい境遇に対して同情したり、我が身と重ねてしまったりする方も少なくないかと、思います。
 しかし、あえて反論させていただきますが、クリフォードは貴族の金持ちで、見栄っ張り、陰険な性的不能者、メラーズは貧乏な庶民ながらも、紳士で誠実、何よりも精力は半端ないぞ! って、わざとらしいほどの対立要件ですね。コニー出なくても、大半の女性はメラーズを選ぶに違いないでしょう。三角関係さえ成立していませんなあ。
 このお話は平たく言うと、「欲求不満の人妻が、庶民の男の全裸に心奪われて、彼との関係に夢中になって、夫を見限りました。めでたしめでたし」という、身も蓋もないものになってしまいます。
 コニーがクリフォードに愛があって、クリフォードも彼女を懸命に愛して満たそうとしていれば、コニーは、心はクリフォードに、体はメラーズにと、ひっきりなしに揺れ続け、求めてしまう……。そういう葛藤のあるお話の方が、私の好みだったのに、本当に惜しいです。
 でも、かなり読みやすい翻訳です。古典的エロをお求めの方に、お勧めいたします。それでは。




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