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2024年8月25日 (日)

『新九郎、奔る!』17巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想

 コミック『新九郎、奔る!』17巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 駿河の家督相続編、ついに決着! まあ、16巻からの流れで、小鹿新五郎と孫五郎側に、勝機はなかったと、予想されるのですが、けれども、やはり、やむを得ないとはいえ、苦い勝利……。

 簡単に、あらすじを申しましょう。
 新九郎らは、清水の知行、伊達の軍勢と合流し、西へと向かいます。が、新五郎側の駿府方は、龍王丸の丸子攻めの最中。西から、朝比奈、岡部の新手の軍勢が到来し、丸子方を優勢に導く一方、駿府の福島修理亮の長男、兵庫充が、従弟の彦四郎に斬殺され、みるみるうちに趨勢が変わっていきます。駿府館に到着した新九郎は、彦四郎の協力で、門を開けさせ、突入するのでした。
 重病の新五郎は、家来からの報告で、伊達、入江、興津、庵原らの裏切りを知り、愕然とします。孫五郎は奮戦するものの、ついに、新五郎の眼前で倒れ伏します。新五郎は館に火をかけますが、炎の中、新九郎と最期に再会したのでした。
 戦いの後、新九郎は、家中の者に恨みつらみを残さないよう、自分が憎まれ役となって、信賞必罰の処理を行なうのですけれども、不満は噴出し、矢部左衛門尉らが反乱を起こし、翌年になっても、新九郎は鎮圧に忙殺されます。この事態に、痺れを切らせ、伊都が三月に駿河へやって来ます。伊都は合議を開き、家来達の前で、自分が今川家の家長を務めることを宣言し、謀反の鎮圧を命じます。結果、矢部は滅んで、新九郎は褒美として、富士下方を所領として得ました。
 また、伊都は、堀越源五郎の息子、一秀を呼び寄せます。龍王丸は彼に、瀬名一秀の名を与えて、源五郎の遺領を与え、近臣に任命しました。
 騒動が片付いて、新九郎は、堀越公方の足利政知に挨拶に行きますが、何と、奉公衆に任命されたのでした。また、奔放で言いたい放題の息子、茶々丸に手を焼かされます。
 一年二ヶ月ぶりに、京へ帰館した新九郎は、新右衛門の死に、ショックを受けます。また、従兄の貞宗は、近江の鈎に滞陣したままの将軍、義尚に、大いに手を焼いている様子。加えて、義尚は聞く耳を持たず、新九郎も門前払いにされてしまいます。せっかく、帰洛したというのに、新たな問題発生……。


 

 山場はやはり、前半の駿河の戦いでしょう。単なる数と勢い任せの駿府方と、事前の根回し、下調べ、軍略も行なったであろう丸子方=新九郎のコントラストは、なかなか魅せてくれます。
 しかしながら、戦国時代の合戦よりは小規模ではありますが、くせ者の福島さえも、前線で命がけで戦っている点、戦いの緊張感、死の恐怖が伝わってまいります。特に、新九郎と新五郎は、立場が異なっていて、互いの跡継ぎを推しているため、戦わなければならなかったわけです。もし、新五郎が極悪非道の者で、新九郎が成敗する、というのであれば、もっと後味がよくなったでしょう。若い孫五郎の死は、痛ましかったです。
 あらすじでは省略しましたが、戦後処理に関しても、相当に大変だなと、思いました。悲しみに暮れる、孫五郎の弟の竹若丸、彼に同情して、新九郎をののしる龍王丸は、本当に純粋な友情を感じさせます。新五郎の妻、むめは自害しようとし、これまた美しい夫婦愛です。
 裏表紙にも登場しますが、久しぶりに出てきた、ぬいが、何だかエロいというか、人妻? 熟女? っぽいオーラを放っていましたね。性格は、変わっていませんでしたけれども。
 駿河が落ち着いたと思ったら、将軍義尚の不摂生と、わがままですか。本当に、どうしたらいいやら、私は全然わかりませぬ。こういうタイプって、身近にいなくても、知り合いの知り合いあたりにいることがあります。コネクションの重要さといい、大昔の戦いだからといって、見逃すには惜しい、この時代の背景を、これからも読んでいきたいと、私は思いました。お勧めいたします。それでは。


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