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2024年9月14日 (土)

『イマージュ』(ジャン・ド・ベルグ 行方未知/訳 富士見ロマン文庫 No.107)の感想

 書籍『イマージュ』(ジャン・ド・ベルグ 行方未知/訳 富士見ロマン文庫 No.107)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 これまた、強烈な仕様の小説です。作者様が不明ならば、翻訳者様も不明っぽいし(お名前をごらんください)、序辞をささげているポリーヌ・レアージュ自身が、『O嬢の物語』の謎作家なのですから。
 それなのに、翻訳者様は15ページもの、非常に詳細な解説を書いておられるし、佐藤和宏の描いた表紙カバー(ちょっと、人前では見せられないエロすぎ)と本文イラストは、ハンス・ベルメールと似た感じの、シュールでエロティックな魅力があります。読むのと同時に、見る楽しみもあって、私としては、なかなか得をしてしまいました。
 それで、肝心の中味は、と申しますと……。

 登場人物は、語り手たる青年ジャンと、彼が知り合った、謎めいた美女、クレール。もう一人が、ある意味、真主人公といえるかもしれない、美少女、アンヌ。あらすじは、ごく簡単で、クレールはアンヌを、囲い者かペットのようにあつかい、ジャンは時として、激しい責めと屈辱にぐったりしたアンヌを、乱暴に陵辱するのでした。
 アンヌはクレールに対して、絶対服従の態度を取り続けます。ローブをめくり上げて、ジャンの前に、下着をつけていない下半身を露出させたり、庭園のバラを無断でむしり取ったり、というのは、ほんの序の口。敏感な箇所、恥ずかしい部分への鞭打ち、淫らな写真の撮影と、クレールの命令は、どんどんエスカレートしていき、アンヌは心身ともに疲弊させられます。一方的に責め続けていたクレールでしたが、ジャンと二人きりになった時、秘められた願望を現わし、何度も告げるのでした。「あなたが好きです」「愛している」と……。



 私の感想として、まず、いただけない点は、巻末の解説が、くわしすぎて、あまりおもしろくありませぬ。フランスで発禁本になったそうですが、私としては、「ふーん」ですね。
 大きな駅の売店でよく売られている、日本の官能小説文庫の方が、ずっといやらしくて、グロテスクだと思うのですが?
 もう一つは、翻訳者様のせいではなく、あくまで作者様の個性だと予想しているのですが、描写がくどい! アンヌが柱に拘束されている様子など、シンプルに、すっきりと描いてくれれば、もっと読みやすかったでしょう。
 アンヌといえば、「かわいいアンヌ」は、何度読まされたことか! しかも、アンヌは外見は完璧ながらも、恥ずかしがってばかりいて、さほど反抗をしない、性格的につまらない少女なのですけどね。
 それでも、血や精液、尿など、まるで目の前に展開するかのような描写力は、圧倒されましたね。
 美少女アンヌの苦悶に、ジャンが興奮する場面、それらがクレールにも伝わって……と、心理や感覚が描かれている点、このお話は官能小説というより、官能がテーマの、心理小説か、純文学なのではないかと、私は思いました。
 だから、『O嬢の物語』同様、エロティック描写を読んで興奮するのが目的の方は、大いに拍子抜けさせられると、私は予想いたします。
 イラストも過激なので、十代の方にはお勧めできませぬ。やはり、R18にされるでしょうね。
 ゆったりとしたストーリーの流れで、女帝のように君臨していたクレールが……という心の変化、痛々しく残酷ながらも、感じている? 幸せそうな? アンヌの状態や内面に思いをはせる、そんな虚像(イマージュ)を楽しんでみてください。想像力豊かなエロ好きのお方にお勧めいたします。それでは。
 

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