四コマ漫画

2023年8月12日 (土)

『軍師 黒田官兵衛伝』6巻(重野なおき・白泉社)の感想

 四コマ漫画『軍師 黒田官兵衛伝』6巻(重野なおき・白泉社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 重野なおきシリーズも、今回で終わりです。こちらの本は、『殺っちゃえ!‼ 宇喜多さん』1巻の次に、私的にはおもしろかったです。
 簡単なあらすじを記しますね。羽柴秀吉軍軍師として、官兵衛は総勢十一万を率いて、四国の長曾我部元親軍と対決します。元親は三方向に分かれた秀吉軍のうち、讃岐方面軍へ奇襲を仕掛けますが、すでに官兵衛は見抜いていて、先に逃走していました。四国各地の城が、圧倒的な秀吉軍の前に次々と陥落し、元親は降伏せざるを得ませんでした。
 天正13年11月、徳川重臣の石川数正が秀吉側に寝返ったのをきっかけに、徳川家康との決戦準備に入っていたのですが、大地震のために中止。九州の島津征伐に向かいます。
 ところが、島津家長男で当主の義久、次男の義弘、三男の歳久、四男の家久、彼ら四兄弟は全員英傑と言われ、雑兵さえも死を恐れずに連帯して攻撃する、鬼のような強さを持っていました。四国攻め同様、数にものを言わせて圧勝するはずでしたが、何と、戸次川の戦いで、仙石秀久+長曾我部元親軍は、島津家久に敗北してしまいます。
 けれども、秀吉が十八万の大群を連れてきたことにより、島津が苦手な攻城戦に変えていきます。砦を柵で囲み、休みなく、膨大な鉄砲を撃ち続ける、この根白坂の戦いで、島津義弘・家久軍は柵を乗り越えられず、義久はついに、降伏を決定しました。
 九州征伐後、官兵衛は、秀吉の論功行賞によって、豊前六郡を与えられましたが、どうやら、元の城主が黙っていない様子……。

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2023年7月29日 (土)

『真田魂』4巻(重野なおき・白泉社)の感想

 四コマ漫画『真田魂』4巻(重野なおき・白泉社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 4巻のポイントは、前半と後半で、テーマが分かれています。前半は、二十二万人兵力を有する豊臣秀吉軍VS北条軍による戦、小田原征伐。後半は、秀吉逝去後の徳川家康VS石田三成の二者対立のはずが、全国指折りの大名を巻きこむ総力戦、関ヶ原の戦いへのつながりについてです。
 前半は、ギャグを踏まえた大規模な、しかし皆がそろっていた戦いが、後半、仲がよかった真田家が、ついに真っ二つに別れる、なかなかインパクトのあるお話です。
 あらすじとしては、圧倒的勢力によって、上杉軍、武田軍をも退けた、北条軍が、どんどん切り崩され、包囲されていきます。人質ではなく、念願の初陣となって、ノリノリの信繁に、冷静そうでいて戦る気満々の信幸、着実に任務をこなす昌幸。対する北条軍は、なおも評定を続けており、伊達政宗との共闘を模索するなど、時間を取られているうちに……呆気ない結末を迎えます。
 そして、秀吉逝去後、慶長の役から解き放たれて戻った、加藤清正ら七人が、石田三成に反旗をひるがえそうとします。これを、徳川家康が和解させますが、光成と大谷吉継が決起して、家康討伐に進もうとします。そこへ豊臣三奉行も同様の書状を全国へ配ったため、全国の有力大名が、徳川派、豊臣派となって挙兵します。
 真田家もこの流れに巻きこまれ、昌幸と信繁は豊臣派、信幸は徳川派に分かれてしまいました。信繁と信幸は、兄弟でありながら、刀に手をかけるほど殺気立つのですが、昌幸が、「どちらかの真田は生き残れる!! これより我らは 別々の道へ進むぞ!!」(P108)、言って制止したのでした。
 いわゆる、「犬伏の別れ」にて、昌幸と信繁は上田城へ、信幸は徳川軍に合流するため、彼らは敵同士となってしまうのでした。



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2023年7月16日 (日)

『信長の忍び』20巻(重野なおき・白泉社)の感想

 四コマ漫画『信長の忍び』20巻(重野なおき・白泉社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 第二次天正伊賀の乱、開始! なのですが、今回は織田軍の攻撃というよりも、千鳥が「信長の忍び」として、彼の命をねらう、伊賀のトップエリート「忍術上手十一人」と戦う、というものです。
 千鳥はもっと、師匠や元の仲間を攻撃することをためらったり、悩んだりするのではないかと、私は予想しておりましたが、ぶれませんね。まあ、感傷に流されず、まよわない人物の方が好きですよ。
 
 あらすじは、上記でほぼ言い切ってしまいましたが、念のため、述べます。
 天正9年、信長は、徳川軍VS武田軍の高天神城攻防戦について、武田軍の降伏を受け入れないよう、指示を出します。これによって、高天神城は壊滅し、武田勝頼が見殺しにしたかのような形になってしまうのでした。
 また、信長は、宣教師達の持ちこんだもののうち、大柄の黒人従者をスカウトして、弥助と名付けます。京にて、正親町天皇まで見物した、大々的な軍事パレード、馬揃えも行なって、お祭りムードでしたが、そのような最中で、伊賀の忍びが信長をねらって侵入してきます。
 楯岡道順、上野ノ左のうち、後者は何と堀秀政に変装してきましたが、助蔵が撃退します。大炊孫大夫は家臣の謀反の流言を飛ばし、信長の周囲は騒然。千鳥は責任を感じて、織田軍と別個に、助蔵とともに伊賀の忍術上手と戦おうと、決心します。
 伊賀では、大炊孫大夫、下柘植ノ木猿・小猿、新藤小太郎、甲山太郎四郎・太郎左衛門と戦ううちに、千鳥と助蔵はペアを組んでいるはずが、バラバラに。千鳥は、小南、弥左衛門の二人と遭遇。一方、助蔵は山田八右衛門との戦いに辛勝するものの、半死半生? 大ピンチのまま、続きます。
 





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2023年7月 8日 (土)

『雑兵めし物語』2巻(重野なおき・竹書房)の感想

 四コマ漫画『雑兵めし物語』2巻(重野なおき・竹書房)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 日常系+グルメ+ラブコメの要素を、戦国時代という生死と隣り合わせのシビアな状況で包みこんだ、ほのぼの四コマといった感じのこの作品ですが’(長い説明で、すみませぬ)、2巻でも少しずつ、いろいろな面で進展が見られます。
 あらすじを挙げますと、時代は天文17年秋から天分18年春(1548~1549年)、作兵衛とつるの仲は、甘々ではありませんが、家族っぽく、時としてラブコメ的な流れにもなってきました。つるの食い意地は相変わらずですが(笑)、意識しているのか、同居人のことを質問したところ、作兵衛は兄貴代わりの伝蔵のエピソードを語ります。武家奉公に出世したのに、伝蔵は雑兵時の悪癖ゆえか、あえない最期を遂げて、この家は作兵衛のものとなったそうです。一方、弟分の豆蔵も仕官を目指しますが、あっさり不採用でした。
 年を越え春になって、作兵衛は、万屋の店主、さよりから、越後へ行って塩を買うように頼まれ、豆蔵やつるをともなって向かいます。珍しい食材や初めての醤油に驚かされ、長尾景虎(後の上杉謙信)に助けられなどする、充実したものでした。
 しかし、塩不足をまぬがれたかと、安心できるどころか、大地震、天候不良と、緊迫した出来事ばかりが続きます。飢餓の危機が高まった頃、武田軍との戦開始という、起死回生の知らせが来て、伝兵衛は奮い立つのでした。

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2023年7月 1日 (土)

『殺っちゃえ‼ 宇喜多さん』1巻(重野なおき・リイド社)の感想・追記

 四コマ漫画『殺っちゃえ‼ 宇喜多さん』1巻(重野なおき・リイド社)の感想の追記です。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 先の感想で、私は主人公と浦上宗景のことばかり書いてしまいましたが、他にも印象的な人物がいます。
 まず、直家の、名前がわからない実母。興家に代わって、宇喜多家の大黒柱となり、側室やその子供をも受け入れ、息子の出世のために浦上家で働くタフな女性です。惜しいことに、浦上宗景が登場すると、交代するかように、その後が描かれなくなりました。
 

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2023年6月24日 (土)

『殺っちゃえ‼ 宇喜多さん』1巻(重野なおき・リイド社)の感想

 四コマ漫画『殺っちゃえ‼ 宇喜多さん』1巻(重野なおき・リイド社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 今回は歴史四コマがお得意な作者様の作品の中でも、戦国三大梟雄の一人で最恐と言われる大名、宇喜多直家が主人公です。恐らく、今までの主人公の中で、もっともダークかつ陰キャだと思われますが、どんな作品になったでしょうか。無暗に暗い雰囲気なのではないかと、私は危ぶんでいたのですが、杞憂でした。テンポのよいギャグは、健在です。ただ、宇喜多直家の他にも、インパクトの強いキャラクターがいましたね。

 あらすじとしては、後に宇喜多直家となる、利発な少年、八郎でしたが、祖父の能家が島村盛実に城を攻め落とされ、自殺するところから始まります。すべてを失った一家は、備前から備後へ移り住み、豪商の阿部善定の援助を受けながら、生活します。ほどなくして、実父の興家が死亡し、その7年後に、八郎は大名の浦上宗景に仕えることになります。
 やたらと明るくて宴会好きな主君に、八郎は戸惑うものの、初陣で手柄を立てて乙子城の城主に出世。海賊と渡り合いながら、後に宇喜多三家老と呼ばれる、有能な部下も集まります。着実に地歩を固めていった直家でしたが、浦上宗景から、浮田国定を討つべしとの命令を受け、正攻法で戦って勝ちますが、四年もかかった上、大勢の部下の死亡もあり、直家は戦そのものに疑問を持ち始めます。
 二年後、中山信正の娘と結婚し、娘達も生まれますが、さらに八年経って、浦上宗景から仇敵の島村盛実と……義父の中山信正の討伐指令が下ります。直家は即座に応じて、自らの手で中山信正を、次に、島村盛実を謀殺します。結果、妻は衝撃を受けて自殺。直家は、中山、島村の領地をもらいましたが、備中の強敵、三村家と接することに。悲劇的な試練を乗り越えた直家の内面に、暗黒の情熱が宿るのでした。

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2022年10月10日 (月)

『信長の忍び』19巻(重野なおき・白泉社)の感想

 四コマ漫画『信長の忍び』19巻(重野なおき・白泉社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 もう19巻! なのですが、安定のおもしろさでした。何度も繰り返しているでしょうが、やっぱりすごい、すばらしい。
 あらすじとしては、戦国大名(織田信雄)VS忍びという、前代未聞の合戦、天正伊賀の乱が開戦されます。織田軍にも、柘植保重という、勇敢で忠実な重臣がおりましたが、11人の精鋭忍び達に苦戦した挙句、柘植は討死して敗退。千鳥さえも負傷します。
 次に、荒木村重が脱出した有岡城が落ち、黒田官兵衛は助けられました。けれども、荒木側の妻のだし他の家族、城兵、下人らが、信長によって無惨に処刑されます。
 さらに、10年間も敵対し続けてきた本願寺が、ついに降伏。ただし、息子の教如は頑強に反対していたため、顕如は彼を義絶しました。
 四か月後、教如がやむなく退出した後、その石山本願寺が放火か失火か、とにかく全焼してしまいます。その責任を取らされる形で(他にも19条の失態あり)、重臣の佐久間信盛が追放されます。
 有岡城関係者の処刑、佐久間他の三人の重臣叱責、追放といった信長の処断に、明智光秀は、一人ひそかに衝撃を受けていたのでした。ここで終わり。
 次は、第二次天正伊賀の乱に続くそうです。

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2022年8月27日 (土)

『雑兵めし物語』1巻(重野なおき・竹書房)の感想・追記

 四コマ漫画『雑兵めし物語』1巻(重野なおき・竹書房)の感想です。
 すみませぬ。前回の感想が、あまりにもシンプルでしたので。

 食べ物や食事シーン以外で、私的に一番インパクトがあったのは、馬場信春に射かけられて、豆助が負傷し、悲鳴をあげる場面です。

 豆助:「(自主規制)時より いてえっスー‼」
 作兵衛:「もっといいたとえ無えのか‼」
 

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2022年8月22日 (月)

『雑兵めし物語』1巻(重野なおき・竹書房)の感想

 四コマ漫画『雑兵めし物語』1巻(重野なおき・竹書房)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 私は大昔の衣食住、取り分け、食について、くわしく説明された資料や漫画は、大好きです! 食い意地が張っておりますから。
 なので、戦国時代の雑兵の、食事情を中心に、おもしろおかしく描かれたこの漫画は、まさに、打ってつけでした。
 あらすじとしては、信濃の国で武田軍(メインは馬場信春)と対決する、小笠原軍と雑兵達。懸命に食料を調達しようとする、料理好きの主人公、作兵衛は、弟分の豆助と行動を共にするうちに、元武家の落ちぶれ姫、つると出会います。食い意地が張っていてドジなつるを、作兵衛は放っておけず、村の少女、小菊の力も借りて、一緒に住むことに。そうこうするうちにも、武田軍の侵攻は続き、豆助は負傷します。ところが、作兵衛は、回復した豆助とともに、武田の築城の手伝いをするなど、つるにとっては、理解できない行動をするのでした。
 作兵衛は、つると同居していますが、色っぽい展開はゼロです。豆助と小菊も、意識はし合っているようですが、こちらも進展なし。なので、純粋に、戦国時代の雑兵の、食をメインにした、暮らしぶりを描いた漫画といえるでしょう。
 ゆえに、いただけない点を先に申し上げますと、意外性はあまりなく、ストーリー展開も、この作者様には珍しく、平坦な方です。今までの戦国四コマのノリを期待していると、大いに肩透かしにあうでしょう。
 それから、私的に不満だったのが、本文の用紙に、ハイバルキーを使っているのではないかと、いうことです。
 ハイバルキーは、同人誌発行の際、一度使ってみて、大いに後悔した、安っぽい質感の紙です。
 作者様や出版社のせいではないのですが、いやな思い出がよみがえってしまいましたよ。

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2021年11月13日 (土)

『信長の忍び』18巻(重野なおき・白泉社)の感想

 四コマ漫画『信長の忍び』18巻(重野なおき・白泉社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 18巻のあらすじとしては、織田軍による、荒木村重がいる有岡城攻めが進展せず、軍師の黒田官兵衛が行方不明になったため、信長は官兵衛の息子、松寿丸を処刑するように、秀吉側に命令します。ここで、もう一人の軍師、竹中半兵衛は、命を賭けた、最後の計略を行ないます。
 そして、有岡城攻めは、長期包囲戦へ突入。じわじわと、追い詰められていく村重は、毛利軍の救援を要請すべく、単独で城から脱出するという、とんでもない手に!
 後半は、織田信雄の独断専行により、天将伊賀の乱が勃発。千鳥と助蔵が伊賀の里へおもむき、百地丹波に説得を試みますが、決裂。ここに、大名VS戦の常識やルールが通じない、忍び集団という、前代未聞の戦いが始まろうとしています。
 と、相変わらず、超盛り上げりそうなところで、終わりました。
 また、メインのお話とは別に、徳川家の内部抗争である、瀬名姫と信康の乱行とその結末について。こちらでは、信長が家康に、処断してよいと許可した、という平和な筋になっていますが、私は少々疑っています。いいえ、作者様の表現が気に入らないとか、そういうのではなくて、家康がひたすら信長に従っていたというのは、どうかなあと、思うのですよね。
 また、これも、あらすじで省略しましたが、上杉家のお家騒動の決着がついた代わり、武田家と北条家の同盟が破綻してしまいます。勝頼の妻、北条夫人は苦悩しながらも(このあたり、痛ましい)、一つの結論を出します。彼女の捨て身の覚悟が、また新たな悲劇を生むのですが。

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