書籍・雑誌

2023年9月16日 (土)

『戸川純エッセー集 ピーポー&メ-』(ele-king books (株)Pヴァイン)の感想

 書籍『戸川純エッセー集 ピーポー&メ-』(ele-king books (株)Pヴァイン)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 私は自分でも満足できるような感想文をかけておりませんが、今回は今までにまして、ごく単純なことしか記せませぬ。申しわけありません。
 それというのも、私自身、芸能界に極めてうといのと、ミュージック関係はさらに無知であるからです。
 この本は、『戸川純エッセー集』と銘打たれておられますが、作者様に縁の深く、強いインパクトを与えた人々を紹介した内容です。
 あとがきによれば、「連載がエレキングで始まった当初、人選に割と細かいコンセプトを立てた。基本ミュージシャンであり、パンクな人で、わたしと会ったことがあり、エピソードもあり、なんといっても直接的でも間接的でもわたしをゲラゲラ笑わせてくれた人、わたしの好きな人。そして良い意味でわたしの価値観を壊してくれたか、もともとのわたしの価値観を再確認させてくれた人。そして、今尚、現役で活動している人。」という人選だったそうですが、連載が進むにつれて、変更点が増え、蜷川幸雄さん、遠藤賢司さんが亡くなり、ショックも受けたそうです。
 さらに、岡本太郎生誕百年記念オファーされたり、特別収録されたりしたものもあって、作者様には不本意だったかもしれませんが、読者の私にとっては、極端から極端へ移る、いいカオス具合の内容でした。

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2023年9月 9日 (土)

『黒い文学館』(生田耕作・中公文庫)の感想

『黒い文学館』(生田耕作・中公文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 巻末の説明によると、こちらの本は文庫化するにあたって、底本に『生田耕作評論集成1・2・3』(奢灞都館 1991~3年)所収の改訂稿を使用し、『るさんちまん』(人文書院 1975年)よりマンディアルグ関連の原稿を追加収録したものだそうです。
 だから、これらの本をすべて持っておられる方には、内容がダブっていて、物足りないかもしれません。
 ジャンル的には、評論なのでしょうが、エッセイ的なものもありましたね。
 私的には、まあまあ読みやすかったです。
 内容は、次のとおり。

 Ⅰ 黒い文学館
 Ⅱ 新と旧
 Ⅲ 人と作品
 Ⅳ 光と影
 Ⅴ 書物のある日々


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2023年8月20日 (日)

『ダミー・ワイフ』(ロバート・シェルドン 江藤潔/訳 富士見ロマン文庫 No.10)の感想・追記

 書籍『ダミー・ワイフ』(ロバート・シェルドン 江藤潔/訳 富士見ロマン文庫 No.10)の感想の追記です。すみませぬ。

 まず、富士見ロマン文庫のナンバーを忘れておりましたので、元の記事ともども、追加いたしました。
 それから、同文庫の、『ブルーエンジェル・デイ』(昭和63年3月発行・未読)巻末の、刊行作品紹介ページを読んでいて、はたと、気づきました。
『ダミー・ワイフ』は、『身代わりプッシー』と、なっていました。
 他にも、いくつかの作品が改題されています。
 次のとおりですが、矢印の左側が旧、右側が新タイトルです。

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2023年8月19日 (土)

『ダミー・ワイフ』(ロバート・シェルドン 江藤潔/訳 富士見ロマン文庫 No.10)の感想

 書籍『ダミー・ワイフ』(ロバート・シェルドン 江藤潔/訳 富士見ロマン文庫 No.10)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 エッチ場面と描写が大好きな私ですが、残念ながら、この本は富士見ロマン文庫の中で今一歩でした。
 理由の一番が、読みにくいという点にありましたけれども、他にもいくつか。後で、まとめて記します。
 あらすじとしては、主人公は元上流階級出身の女性ジョジョで、家出をして、フリーセックスを楽しむ奔放な生活を送っていますが、突然、一卵性双子の妹、モイラから、自分の身代わりになってくれと頼まれ、しぶしぶながら承知します。
 ジョジョはモイラとして、夫のブラッド、娘のシャロンと生活しますが、二人の、表向きは上品で豪奢な暮らしをしながら、その放縦ぶりに驚かされます。特に、シャロンは近所の年配者、クロスウエイと、友人まで巻きこんで、淫らなふるまいをしていることに注目します。
 そこで、ジョジョは乱交パーティーを開いて(!)、その折にクロスウエイを脅迫して、シャロンとの関係を解消させます。さらに、クロスウエイからブラッドの会社の援助も取りつけます。こうして、一連の問題を解決したジョジョは、モイラと再会した時、身代わり代として、思いがけないものを要求するのでした。
 こうやって書くと、おもしろそうだし、あらすじでは省略しましたが、冒頭のジョジョの、やりたい放題描写、シャロンとクロスウエイの、少女と老人の危ない場面、モイラと父親の禁断関係など、よくまあ、次から次へと、性交場面が続くものだと、感心しました、が。
 いただけない点の一つが、ライトノベル風の、口語体表現が多い文章なのに、改行があまりされていないせいか、文章のリズムの工夫がされていないのか、とにかく読みにくいのです。刺激的な場面の連続に、生唾ゴックン、どころか、「はいはい、わかりました」と、心の中で何度言ったことか。

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2023年8月15日 (火)

『綜合ムック 世界の性愛学』(綜合図書)の感想

 書籍『綜合ムック 世界の性愛学』(綜合図書)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 18禁同人誌を作成している上で、資料になるかなと、思って購入した本ですが、なかなかエロ楽しい内容でした。
 さて、一応、書籍と記しましたが、エンタメメインの画集に近い内容ですね。
 発行は、平成25年7月20日、本文執筆は、若月祐二、安倍英明、秦野卓爾だそうで、古書店で見つけました。
 あらすじというか、中味については、表紙の、「春画だけじゃない! 世界のエロティックアートから観る、豊かで淫らな性愛のカタチ」との宣伝文で言い尽くされているかと思いますが、要するに、15~20世紀頃の欧米を中心とした、性愛をテーマに紹介されている本です。
  まず、いただけない点から申し上げますと、どのようなコンセプトで編集されているのか、よくわかりませぬ。ヌードが多いのは当然としても、これは、巨匠の有名作品ではないの? という絵画が、ちらほら挙げられています。
 たとえば、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」が、最初のページにあるのに、私的にエロいと思っている、クリムトは一枚もありませんし、バイロスが載っているのに、ビアズリーやロップスはないし? 春画も説明されていますが、薄味すぎるのでは? また、エロティックアートの画家の生涯、特徴も説明されていて、初心者の私にとっては、とてもありがたいのですが、画家名が原文のままが多くて、読み方がわからず、誰だったっけ? と、戸惑ってしまう、不親切仕様です。
 たとえば、よく取り上げられている、フランスの、ウィリアム・アドルフ・ブグローですが、このカタカナ表記でなく、William  Adolphe  Bouguereauと、画の下に記されているわけですよ。

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2023年8月11日 (金)

『ダンディズム 栄光と悲惨』(生田耕作・中公文庫)の感想・追記

 書籍『ダンディズム 栄光と悲惨』(生田耕作・中公文庫)の感想を追記いたします。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 
 213ページの編集部による注意書きによりますと、この本は、1975年に奢灞都館より刊行されたものを底本にして、「ウィリアム・ベックフォード小伝」と「老いざる獅子--バルベー賛」は、1992年刊「生田耕作評論集成Ⅱ」(同社)所収の改訂稿と差し替え、「黒い文学館」(白水社・1981年)の一部を「付記」として追加収録した、完全版だそうです。
 ずいぶん、手をかけて完成された作品だったのですね。おもしろかったのも、納得です。
 さらに、表紙イラストが、金子國義!
 ディフォルメしているのに、フェロモンが匂い立つような美女画で有名な方ですが、この正装した三人の紳士の絵も、内容に合っていて、いい雰囲気です。
 最後に、巻頭ページに、18世紀のロンドン、ジョージ四世、ベックフォード、バイロンといった、本の内容に深く関わるイラスト? 画像? が掲載されていますが、ジョージ・ブランメルの肖像はありませぬ。
 後記の作者様の言葉によれば、「故意に省き去った」そうです。
 クールで淡々とした感じに描いておられましたが、作者様自身、ブランメルに魅せられているのかな? と、思いました。それでは。

 

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2023年8月 6日 (日)

『ダンディズム 栄光と悲惨』(生田耕作・中公文庫)の感想

 書籍『ダンディズム 栄光と悲惨』(生田耕作・中公文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 この本の内容を一言にまとめますと、19世紀のイギリスで社交界の中心であった、ボー・ブランメル他数名の男性達の人生と、彼らのダンディズムという美学を紹介したものです。エッセイとも、男性の服装の歴史ともいえましょう。
 だから、昔の出来事や服装に関心のない方には、あまり、興味をそそられないかと、思います。
 人間、大切なのは中味で、外見ではない! ましてや、華美な服装など、もってのほか! と、考えておられる方もいらっしゃるでしょうし、確かに、それは正しいでしょう。
 しかしながら、ダンディズムに徹した、19世紀の伊達者達は、この本に描かれている限り、世間の注目を集め、あこがれの的となりながらも、幸福ではないように感じられます。
 それはそれで、並々ならぬ、傑物ぞろいなのでした。


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2023年7月24日 (月)

『奢灞都館刊行 全書籍目録 コンプリート・コレクション』(エディション・イレーヌ)の感想

 書籍『奢灞都館刊行 全書籍目録 コンプリート・コレクション』(エディション・イレーヌ)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 いつもと異なるスタイルで、感想を記します。
 まず、「奢灞都(サバト)館」とは何かというと、フランス文学研究者で翻訳家の生田耕作氏が中心となって、最初は私家本のように発行され、装幀や挿絵等に強くこだわり抜いた、実に美しい本を発行するようになった出版社のことです。
 この本によれば、1972年死者(バタイユ)から始まって、2003年7月ベル・フィーユ アルフォンス・イノウエ銅版画集にて終了されているそうです。
 私が初めて手にした奢灞都館の本は、マンディアルグの『満潮』でした。失礼ながら、古本なのに高額だったため、買うのをあきらめ(今では、ものすごく後悔しています)、別の機会に入手できた、バタイユ『マダム・エドワルダ』だけを持っています。
 これまた、ハンス・ベルメールの挿絵が、グロテスクにエロく、シンプルな短編小説なのに、爆発的なパワーを感じられました。
 そのため、私はずっと、奢灞都館と生田耕作氏の名前を覚えていて、よさそうな小説やエッセイ集などがあれば、今度こそは購入してみたいものだと思っていたところ、この本に出会えたわけです。






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2023年7月 9日 (日)

『稲葉浩志作品集 シアン』(KADOKAWA)の感想

 書籍『稲葉浩志作品集 シアン』(KADOKAWA)の感想を申します。ネタバレが含まれている上に、私はB'zファンのくせに購入するアルバムを選ぶような、いけない&無知なタイプですので、内容にも間違いがあるかもしれません。もし見つかったら、コメントにてご指摘をお願いいたします。ただし、誹謗中傷はご遠慮ください。

 私の手元にあるのは、普及版の方です。予約限定の方ではありません。きっと、そちらの方が、内容的に充実していると、予想しています。だから、私の感想は、「稲葉さん、かっこいい!」と、称賛する、一ファンによるになりますけれども。
 一言で申し上げますと、買ってよかった! 満足しております。今後、LIVE-GYMに参戦するのが、楽しみでなりませぬ。
 本の中味は、「SINGLE&SOLO SELECTION」のサブタイトル? のとおり、B'zシングルと稲葉さんソロアルバムの作詞集です。
 構造としては、次のとおり。

 〇14ページまで現代の稲葉さんのフルカラー写真
 〇シアンの説明
 〇作詞ノート写真その1 SINGLE SELECTION
 〇WORD ANALYSIS Selection 01(インタビュー)
 〇1980年代の作品と写真
 〇1990年代の作品と写真
 〇2000~2009年代の作品と写真
 〇WORD ANALYSIS Selection 02(インタビュー)
   〇2010~2019年代の作品と写真
   〇作詞ノート写真その2 SOLO SELECTION
 〇2020年代の作品、「BANTAM」の直筆コピーと写真
 〇稲葉さんプロフィールと奥付
 



 



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2023年6月18日 (日)

『むちむちぷりん』(宇能鴻一郎・徳間文庫)の感想

 書籍『むちむちぷりん』(宇能鴻一郎・徳間文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 いやぁ、いきなりの精神的土下座です。正直言って、私の好きなバタイユも、富士見ロマン文庫のいくつかの傑作も、こちらを読書中は忘れてしまうほどのおもしろさでした。
 私的2023年ベストブックの1冊になることは、間違いないでしょう。
 ところが、惜しむらくは、この本は2016年2月発行の「精選版」なのです。名前こそ洗練されているかのようですが、実際は1985年4月刊行の文庫から、7篇を再編集した、「抄本」です。
 だから、ヒロインが外人男性と知り合ったと、語っていましたが、そのお話はなく、おかしいなあと思っていましたが。
 差別的表現など、問題があったのでしょうかね? とてもユニークな小説なのに、もったいないです。
 そこで、私、古い方を探しておりますが、この精選版も今は品切れなのか、高いのですよね。
 
 収録されている作品は、次のとおり。

  ケイバ未亡人
  二人がかりで
  雪のモーテル
  レモン汁
  シュッシュッポッポ
  残らされて
  内助の功

 語りは、「あたし」口調の一人称。子供のいない、専業主婦の、若奥様。夫のことは文中で、「主人」と呼んでいますが、どちらも具体的な名前は出てきません。ゲスト的な課長や部下などは、名字だけでも描かれているのに。これは、読者の想像にまかせるという、作者様の意図の現われでしょう。


 

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