『土竜の唄』15巻の感想
ようやく読了しました、コミックス『土竜の唄』(高橋のぼる・小学館)15巻の感想を申します。ネタバレですから、ご注意下さい。
阿湖組長の命令により、でかいシノギ、要するにMDMA取引のため、モグラ(潜入捜査官)でありながら、全国指名手配中の玲二(あ、今頃気づいた。ラインバレルの森次と同じ名前ですな!)は単身、北海道に渡ります。札幌市内のバー、アオザリにて、「ザリガニの刃(ジン)」こと、蝲蛄(ザリガニ・この字、手書き入力でも難儀しました)組組長、海老塚刃との接触に成功しますが、刃は売人であるばかりでなく、自身も中毒者であるという、とんでもない男でした。
しかも、玲二は刃が、警察に密告した疑いのある部下を逆さ吊りにしてダーツを投げつけるという(人間ダーツとは、バイオレンス・ジャックを思い起こします)拷問を行なっている最中に出くわしました。刃はもちろん、同じようにダーツで口を割らせろと命じますが、直感的に部下がシロだと察した玲二は、拷問する真似をしてごまかします。刃は激怒するものの、思いがけず、部下の潔白の証拠が見つかります。他の部下達や玲二も、なだめて円満解決にはるはずでした。けれども、刃はいよいよ逆上。全員に死刑を宣告するや、玲二に向かってマシンガンを撃ちまくります。全員が脅える中、玲二だけは微動だにしない。刃は唖然とするものの、実は玲二は立って目を開けたまま、気絶していました。これが逆に、刃の意にかなって、玲二は助っ人として認められます。翌日、若頭補佐の月原もやって来ました。いよいよ、一筋縄ではいかないロシアン・マフィア、「シベリア スコーピオ」との10億円取引に入る、というところで終わり。
相変わらず、濃い内容でした。はぁーっ(←ため息)。クレイジー・パピヨン、日浦ほどの個性派はもう登場しないと予想しておりましたが、そんじょそこらの先入観を吹っ飛ばす、恐ろしい男が現れましたよ、「ザリガニの刃」。
ストーリーとはあまり関係ないため、省略しましたけれども、刃は拷問の最中も玲二との争いの時も、MDMAを服用しております。錠剤を飲もうとする、舌をだらりと垂らした妙に笑える顔、直後の「いってる目つき」、「エクスタシー!」と絶叫して、マシンガンを構える表情、もうこれは狂人というか、重度中毒者というか、私は本物を見たことがないのでうまく申せませんけれども、かなり怖いですし、気持ち悪いです。それでいて、不思議と存在感はあります。やはり、高橋さんの筆力はすばらしい。
玲二は刃と、太刀打ちできるのでしょうか。ただでさえ、指名手配犯なのに、MDMA取引に加担したら、潜入捜査官どころか、本物の暴力団員ですよ。次巻もいっそう、目が離せません。楽しみです。
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