『土竜の唄』(高橋のぼる)22巻の感想
漫画『土竜の唄』(高橋のぼる 小学館)22巻の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
今回は、クレイジーパピヨンこと日浦、クロケンこと黒河、山田、玲二の四人が、蜂乃巣会の若頭である鰐淵(わにぶち)拓馬を殺害するため、大阪にやって来ます。玲二は果たして、モグラ(潜入捜査官)だとバレないで、鰐淵暗殺阻止することができるのでしょうか。それとも?
通天閣で落ち合った、日浦ら四人。日浦は自分が、新たな数奇矢会をつくるのだと語ります。そして、彼らは近くにある、汚い廃墟のようなバーをアジトとして、早々に暗殺作戦会議を始めます。まず、2週間かけて、鰐淵の行動パターンを探るため、昼間は山田と玲二、夜は日浦とクロケンが行動することになりました。
玲二は山田をバイクの後部座席に乗せて、蜂乃巣会総本部へ向かいますが、警備は厳重で、近づくこともできません。そこで、玲二は妊婦(女装です!)、山田は付き添いの男という格好をして、先祖の墓へ安産祈願をする真似をして、総本部前の寺に入り、様子をうかがいます(玲二って、本当に奇抜な作戦を考えますね)。一時間後、門から出てくる鰐淵の車を発見し、二人は尾行を開始します。
一流ホテルの鉄板焼店に入る鰐淵を追って、玲二も続きます。やがて、奥の個室で、鰐淵ら八人の幹部が食事をしているのを見つけます。上機嫌な鰐淵は軽口をたたきますが、突如として、幹部の一人、井戸蛙(いどがえる。すごいネーミング)の左手をとらえて、焼けた鉄板に押しつけ、「よくも このワシを裏切ってくれたのォ。」と、厳しく責めます。悲鳴をあげる井戸蛙、無残に鉄板で焼かれる音、凍りつく幹部。しかし、鰐淵は恐ろしい形相で、左手を放そうとしません。たまらず、井戸蛙はハワイのリゾート開発で得た収入のことを白状します。さらに、鰐淵は、井戸蛙の頭を鉄板に押しつけ、強引に謝罪と、いっそうの上納金を約束させるのでした。ドアの影から見守って慄然としていた玲二でしたが、鰐淵は目ざとく、フォークを投げつけて、玲二の妊婦をよそおった腹に命中させ、「オノレ、男やな!!」と見破って、全員が色めき立ちます。玲二は全力で逃げますが、38階のフロアでは逃げ隠れできません。やむなく、昇降エレベーターに直結している、アップおよびダウン用エスカレーター2基の狭いすき間に、ウインタースポーツのスケルトンそっくりなスタイルになって、猛スピードで滑り降ります。勢いのまま、宙を飛び、締まりかけたエレベーターに、ぎりぎりで突入。辛くも、逃げ延びたのでした。
一週間経って、山田も玲二も精神的に疲れてきた頃、日浦が明日、鰐淵殺害を実行に移すことを告げます。関西競馬場で行なわれるGIレース、なにわCUPの最高潮に及んだ際、馬主席で観戦している鰐淵を、全員が一斉射撃するというものでした。玲二は思いとどまるよう、日浦に言いますが、逆にキレられ、酒瓶でなぐられます。やむなく、玲二は赤桐のアドバイスを求めるものの、彼は息子とケンカの真っ最中。自分が身をあって阻止するしかないと、決意します。
暗殺決行当日、山田はジャンパー、他の三人はスーツ姿に変装して、楽々と馬主席まで入ります。6階のロイヤルクリスタルルームで、鰐淵の所在を確かめる、玲二と山田。当人がいなければ、中止になるのですが・・・・やはり、いた!
帯カバーによれば、今後のお話は「大阪・ヒットマン編」になるらしいです。「ヤクザがヤクザを殺して、何が悪い!?」という、逆ギレ日浦の台詞のとおり、一般人に被害が及びにくい(かもしれない)、今回の玲二の任務ですが、直接的な殺人に関わるとあれば、また大変そう。序盤のつかみとしては、充分です。今のところ、蜂乃巣会側の動きが不明ですけれども、絶対にこのままでは治まらないでしょう。何か、痛烈な反撃をしてくるはずです。ああ、8月末の、23巻の発売が待ち遠しい。予約しておこうっと。
玲二、獅子奮迅の活躍! というよりは、突飛な活動はすばらしかったですけれども、冷酷苛烈な鰐淵の言動が圧倒していましたね。さらに、今までは小さないさかいはあっても、割と気の合っていた日浦が、鰐淵暗殺をめぐって、激しく玲二と反目しました。これからの展開に、何かの影を落とすことになるのでしょうか。
山田、うっとうしいです! 尾行では終始、逃げ腰だし、玲二の舎弟のくせにタメ口をぬかすし、ストレスを発散できずにヒステリーを起こす。こんな小心で臆病な男、ヤクザに向いていません! 玲二の足を引っ張るだけです! 蜂乃巣会のヒットマンに、真っ先に撃たれてくれないでしょうか。
今回の土竜のグルメは、串かつ。作中には出てきませんでしたが、たぶん新世界のものでしょう。玲二と山田は、オーソドックスなものの他にも、貝柱、えび、トマト、かき、半熟卵の串かつを注文して、ソースをつけて頬張り、二人そろって、「うんめぇーッ!!」と叫んでいました。これはいけると、食べかけの串をソースに浸すや、すかさず店のオヤジ(おっちゃんと呼びたい)が怒鳴り、ソース二度づけ禁止の貼り札を示す。こういうところは、大阪ですよね。パリパリ、サクサクの衣の内側に、旨味がじゅわっ。甘辛ソースも、じんわりとハーモニー。油ギッシュなはずなのに、串かつって、本当に後を引いてしまいます。カットでありましたが、かつお節がくねくね踊る、たこ焼きも美味ですよ。大阪にいらっしゃる方は、ぜひ味わってください。
でも、次巻はグルメどころでないかもしれません。待ち遠しい反面、少し怖いです。玲二が無事でありますように。それでは。
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