『激マン!』(永井豪&ダイナミックプロ)1巻の感想
漫画『激マン!』(永井豪&ダイナミックプロ・日本文芸社)1巻の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。さらに、週刊漫画ゴラク掲載時の感想とかぶっているかもしれませんが、それでもよろしかったら、どうぞ。
1巻に収録されているのは、週刊漫画ゴラクに掲載されていた、第1話から第8話までです。保存してあった、第1話~第7話のスクラップと見比べてみましたが(第8話以降、苦手な作家様がいらっしゃるため、買っていません)、単行本化にあたって、加筆修正はされていないように思います。カバー絵も、第1話掲載の週刊漫画ゴラクの表紙と同じだし、書下ろしは1巻扉絵だけですかね。巻頭カラーページも、第1話の分と宣伝文句が入っていないだけで同じですし、金の箔押しタイトル文字は目立つのですが、カバー下は同じ絵の転用だし、ページ数の割に高いな、と思いました。
中味の方は、『ガラスの仮面』と似て非なる、ダブル構造です。過激な漫画を描くことで有名な主人公、ながい激が、二度目のストーリーマンガを描くチャンスをつかみます。一度目の『魔王ダンテ』は雑誌休刊ゆえに中断しましたが、今度の『デビルマン』は帝映動画でアニメ化もされることだし、「ダンテの仇討ちをしたいんだ!」と意気ごみ、マンガ雑誌「少年マンガ人」の掲載を許可されますが、編集長から、「しっかりした人間ドラマを」と、要求されます。こうして、ながい激は、主人公、怪談話に必要な語り手(飛鳥了)や悪魔の設定、ストーリーの盛り上げ方等、実際のマンガ『デビルマン』と平行して描きながら、語っていくわけです。さらに、アニメ製作にあたって、女悪魔シレーヌのデザインに苦心するところも描かれています。肝心な『デビルマン』は、ながい激のモノローグ、編集者や帝映動画メンバー、タカシやヤスタカなどのダイナミックプロスタッフとの会話によって、どこをどのように工夫したかなど、述べられています。『デビルマン』のストーリーとしては、真面目で平凡っぽい高校生、不動明が、日米ハーフの親友、飛鳥了によって、悪魔(デーモン)の世界侵略を知らされます。それを阻止するため、悪魔と合体して、デビルマンになろうとしますが、なかなかうまくいかなかったものの、思いがけず、明がついに合体成功!? というところで終了しています(さすがに、『デビルマン』の単行本を持っていただけに、ストーリー紹介は早いな。←自主ツッコミ)。
学生時代、永井豪さんの作品にはまっていたことがありますが(最近の作品はご無沙汰で、ごめんなさい)、『激マン!』は今までとやや異なる作品だと思います。 『デビルマン』部分についてならば、特徴的なジェットコースターストーリー、斬新で奇抜な設定やデザインがあるのですが、それ以外の部分は、ながい激と他の人々の地味~ィな会話です。しかも、今のところ、「ながい なにを考えてやがるんだ!」「うるせえ! オレはこれがやりたいんだ!」みたいな、ガチのぶつかり合い、意見の衝突はなく(ない状態が続くと、ダレダレして危険だと思います)、淡々として、「じっくり読む」漫画のタイプになっています。それにしても、主人公がイケメンすぎると思うのですが、ナルシズムも度が過ぎると、のろけ話みたいにつまらなくなりますよ? 大丈夫ですかね?
もう一つ心配なのは、好きな方には申しわけないのですが、永井豪作品は、かなり当たりハズレが激しいように思います。雑誌の休刊による中断はともかく、未完や消化不良みたいな作品もあります。単なる天才イケメン漫画家の、サクセスストーリーになってしまったら、がっかりです。さらに、作中の『デビルマン』が、講談社版の単行本より、進み具合が遅いのも気がかりです。デビルマンの章だけで、10巻以上をついやさないでしょうね? あと、帝映、少年マンガ人、少年チャンポンて・・・・笑ってしまいましたよ。表カバー折り返しの永井豪さんの説明によれば、「この作品は私の漫画創作の日々を描くノンフィクションにきわめて近いフィクション」だそうですが、そこまでポピュラーな名前をいじる必要性があるのでしょうか。
それでも、『激マン!』は、今のところ充分おもしろく、魅力があります。漫画家志望者の方には、発想やアイデア作り、ストーリー展開などが参考になるでしょうし(文章書きの私も、勉強させていただいています)、デビルマン未読の方も「こんな漫画なのね」と、読んで楽しめます。既読の方、ロングキャリアファンの方は、最新の精緻なタッチで、「学生服姿の美少年」として描かれた明、「不良相手に銃を撃つ、凄みを帯びた美少年」了の、躍動感あふれる姿を楽しめます。
私はデビルマンの完全版を読んでいないのですが、もしかして、描き加えた箇所、過激というか、エッチっぽくなった表現もあるように思います。あまり小さなお子様に見せるのは、不向きかも。大人向きの、なつかしい漫画再現、そして過激漫画家の苦闘は始まったばかり。私も楽しみです。どうか、がんばって描ききっていただけますように、応援しています。それでは。
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