『ベルセルク』6巻(三浦建太郎)の感想
漫画『ベルセルク』6巻(三浦建太郎・白泉社)の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
6巻の構成は、「剣の主(2)」、「暗殺者(1)~(4)」、「貴きもの」、「出陣」、「合戦」、「キャスカ(1)~(2)」。今回は、ファンタジー的存在は登場せず、ヨーロッパのどこかの国の中世史を描いているかのようです。ただ、闇にまぎれた暗殺者と化したガッツは、ワタシ的に受け入れ難い、かな? そして、重要人物、キャスカに関するエピソードもあります。
あらすじは、ミッドランドの王女、シャルロットと、グリフィスは親しくなっていきますが、王位第二継承権者、ユリウス伯爵は、そんな彼をうとましく思い、狐狩りに乗じて暗殺をたくらみますが、失敗。逆に、グリフィスは下手人がユリウスだと察知して、報復のため、ガッツに暗殺を依頼します。ガッツは屋敷(居城か?)に忍びこみ、首尾よく目的を果たすものの、その現場を目撃されたため、ユリウスともども、その息子、アドニスをも斬殺せざるを得なくなります。追っ手を振り切り、深手を負って、ガッツは意識朦朧とした状態で、グリフィスの元へ戻りますが、彼はシャルロットと会話中。グリフィスが王女に、「私にとって友とは そんな・・・・“対等の者”だと思っています」と語るのを聞き、ガッツは衝撃を受けるのでした。
次の合戦で、鷹の団は、青鯨超重層猛進撃滅騎士団(ダサい名前ですが、本文のとおりです)と激突しますが、キャスカは団長のアドンと戦うものの、いつもより精鋭を欠いて、ピンチにおちいります。やむなく、ガッツが助力しますが、キャスカは崖から川へ転落。それを追って、ガッツも川へ落ち、二人は助かりましたけれども、息を吹き返したキャスカは、「私だって・・・・好きで女に生まれたわけじゃない・・・・」「おまえにだけは・・・・助けられたくなかった・・・・」と、泣きながら言って、自らの生い立ちを語り、グリフィスとの出会いによって自分自身が変わったと、告げるのでした。
ユリウスは、どうしようもない小者です。しかしながら、その息子で、13歳にもならなかった美少年、アドニスの死の場面は、非常に痛ましい。百戦錬磨の切り込み隊長であるはずのガッツも、愕然としてしまい、追手の兵士に負傷させられます。そして、救いを求めるようにグリフィスを探して・・・・という展開が、とても心憎い演出ですね。ガッツの心の中で、グリフィスは、かけがえのない友であり、越えるべき目標、ライバル(最高!)となってしまったようです。
そんなグリフィスですが、シャルロット王女を篭絡するのは、まあ予想できるとしても、彼は女たらしならぬ、人たらしの能力でもあるのでしょうか? あらすじでは省略しましたが、12歳の少女、キャスカが貴族の男に乱暴されかけていたのを助けた時、剣を投げつけ、彼女自身の手で戦わせるように仕向けたのですよ? 剣技も知らない、庶民の少女を助けるのなら、自分で敵を斬りにいかないでしょうか? そして、初めての殺人に震えるキャスカを、グリフィスは無言でいたわったのです。
どうやら、グリフィスは、ガッツのように、反発する人間は大好きですけれども、無気力、弱気な人間が大嫌いなようです。柔和な外見と裏腹に、強烈な上昇志向の持ち主だと言えるでしょう。嫌いな相手に取り入る術も心得ていて、聡明なようです。そんなグリフィスが、「暗殺」という仕事を任せるガッツの存在は、とても重く、信頼しているのでしょう。しかも、ガッツはグリフィスに追いつけ追い越せという一念のみに駆られていて、グリフィスの真意は察知していないようで。彼らの友情と信頼の強さこそ、後の悲劇を生むのですから、皮肉なものです。それでは。
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