『美女斬り御免! だるま大吾郎艶情剣 女侠篇』(鳴海丈)の感想
時代小説『美女斬り御免! だるま大吾郎艶情剣 女侠篇』(鳴海丈・学研M文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
この小説は、月刊プレイコミック(秋田書店)の別冊付録、または本編に連載されていたものを、第一~第五話まで収録されています。連載中は前編や後編に分かれている場合もありましたが、ほぼ一話完結ですから、どのお話から読んでも大丈夫! という、読者サービスに徹したスタイルになっています。
しかしながら、何がよいといっても、中味ですね! 官能時代小説ながら明るめですが、エロばかりでなく、奇妙な事件を解決する、勧善懲悪タイプの推理も加わっております。
主人公は、だるまの旦那こと、樽間大吾郎。四十二歳の浪人で、大道芸をやる一方、裏では、秘密の事件を解決する、お助け屋という、二つの顔を持つ男です。彼は一見、ずんぐりしてイケメンとはほど遠い外見ですが、剣の腕が立ち、何よりも、股間に常人の倍はある、黒達磨を有しており、これで美女美少女を喜悦に導く、特技(?)の持ち主。そういう小説ですから、時代小説で男女の濡れ事なんぞ見たくない、という方にはお勧めできません。けれども、最近のギャル系のドライさ明るさには、ちとドン引きされている、私と感受性が似た方には、ジャストフィットするはずです。
何よりも、私がいいなと思ったのは、そのような奥ゆかしくも艶のある、着物官能場面だけではなく、男勝りの美少女が事件の解決に活躍し、男達へ威勢のいい啖呵を浴びせる一方、大吾郎には心底惚れていて、恥じらいながら求めるという二面性を示すところです。これはツンデレというより、男の理想ではないでしょうか。ワタシ的には、ちょっと、くやしうらやまし、ですけどね。
メインヒロインは、最初、大吾郎を敵視し殺そうとしたものの、彼の黒達磨によって花を散らされた挙句、真の官能に目覚めて彼を恋する、男装の女剣士(一見、若衆のよう)、郷田真紗美。そして、第四話から登場する、吉原の忘八娘の九郎。彼女は黒い半纏に黒い川並で、大吾郎から女にされたのをきっかけに、九郎のお六(通常は、お六)に名を変えます。プレイコミックの連載を愛読していましたから、知っているのですが、お六は今回は一度限りの登場ですけれども、次第に真紗美と、大吾郎をめぐって争うようになるのも、三角関係好きの私の好みにピッタリです。
プレイコミック掲載時より、140枚も加筆されており、何かとお得な内容ですが、唯一残念なのは、挿絵担当の八月薫さんのイラストが、表紙のみにしか使われていないことです。あの清楚で気品がありながらも、むっちりした柔肌の肉感、白い肌のつややかさを表現していて、とことんエロく、私は大好きだったのですけどねえ。私は第一話の真紗美も好きですが、第四話の、お六と華魁(おいらん)が大吾郎に絡み合う、第四話が一番お気に入りです。次の巻も、レビューしたいですね。それでは。
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