『絢爛たるグランドセーヌ』3巻(Curvie・秋田書店)の感想
たとえば、SF系のお話となると、地球の危機や世界征服をねらう悪者とかがよく現われますが、バレエのプロを目指す少女の、ごく小さな一歩ごとのストーリーだって、大きな感動を生むということなのでしょう。
あらすじは(今回も簡単ですから助かりますわ)、コンクールで奏の踊ったスワニルダは、基本はマスターしていたとはいえ、栗栖さくらの影響をモロに受けた、とんでもないもの(さくらいわく、「面白い踊りだったね」)でした。奏は反省し、決戦ではロイヤル・バレエの元プリンシパル、アビゲイル・ニコルズの踊りを模倣します。結果、奏は三位、さくらは意外にも二位、翔子が一位に。翔子は奏に勝てたものの、奏は負けましたから、一日だけ「楽しく踊ろう」クラスに入って、そこの玉木先生から大切なことを教えられます。また、パリオペ元エトワール、ウジェーヌ・ガレルのワークショップに参加したところ、さくらと偶然に出会います。さくらもまた、上達の道を模索していたのでした。奏とさくらは、意気投合します。
2巻の感想では省略していましたが、1巻でも述べていた、このお話の欠点、全身の絵柄に違和感があること、専門用語が難しいことが、改善されてきていますけれども、まだ充分ではないです。惜しいなあ。
それから、あらすじこそ、わかりやすいですが、内容はかなり深いです。大半が奏の視点でストーリーが進んでいるから、ブレがなく、彼女のバレエへのまっすぐな情熱が伝わりやすい、からでしょうか。
バレエのテクニック的には奏より上のはずのさくらですが、今回もまた、奏相手に、二度も激昂しています。さくらの踊りが奏にはプレッシャーにさえならない上、奏は、「いざ踊り始めると(中略)勝負のこと 忘れちゃうんだ/あとは野となれ山となれーって感じ」と、笑って答えたため、さくらは、「あなたが大嫌いよ」と、マジギレ。そして、トイレでは、奏と翔子の上達ぶりに、「なんで追いついてくるの!!?」と、泣き叫びます。やはり、エリートは、つまずくと、もろいところがある?
そんなさくらを、奏は気にかけていましたが、ワークショップ終了後に、「カナ(さくらの奏に対するあだ名)と出会ったことで目が覚めた」と、さばさばと、語ります。しかし、友達になろうと提案する奏へ、「あなたみたいな油断ならないヤツと馴れあうなんて真っ平!」と、さくらは言い切りますが、その表情は2巻の能面のような顔つき、冷笑からはほど遠い、楽しそうな笑顔。私も何だか、ほっとしました。さくらと奏は、ライバルであると同時に、いい関係になれそうです。
さらに、別ストーリーとして、奏の師匠である滝本先生ですが、ウジェーヌ・ガレルと知り合いであるばかりか、彼から当初、「リュドミラ(リューダ)」と呼ばれていたのは、どんな経緯があるのでしょう? その辺も含めて、この漫画からしばらく目を離せなさそうです。
最後に、3巻の印象的なセリフをいくつか挙げます。
滝本先生:うまい人の真似は どんどんしなさい/だけど 役柄の魂の部分まで人の真似じゃ あなたが踊る意味はない
奏:表現するって実際に その感情を胸に抱きながら踊ることだ/踊りながら『私は今怒ってる』って考えることじゃない!!
4巻も楽しみです。それでは。
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