『新九郎、奔る!』1巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想
コミック『新九郎、奔る!』1巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
しかし、愛書を、うっかり処分したり、貸したままにしたり、紛失してしまうクセは、何とか改善しないと!
ともかく、ゆうきまさみの新作は、北条早雲の物語です。1巻のあらすじとしては、十一歳の利発な少年、伊勢千代丸が、父の盛定に呼び出されて、伯父の貞親の屋敷で暮らすことになります。平穏な生活から、父や伯父、兄の貞興らを通じて、文正の政変という権力争いを垣間見、やがて、大乱(応仁の乱)を予感させながら、2巻に続く・・・・惜しい! もっと読んでいたかったです。
いただけない点としては、「リアル」「ウィンウィンの関係」など、外来語が入ること。『信長の忍び』のようなコメディなら、それもありでしょうが、それこそ、室町末期のリアルをシリアスに追究するストーリーならば、私としては、不協和音的というか、一瞬、興ざめしてしまいます。
もう一つ、これは作者様のせいではありませんけれども、同じような名前が多くて、「えーっと、誰だっけ、これ」と、いちいち、ページを戻して確認しなければならないのが、やや面倒です。
もちろん、私自身の不勉強もあるのですが、漫画好きの友人(日本史知識はそこそこ)も、「うーん、ちょっと難しい内容かも」と、言っていました。この時代、重要ながらも、案外、スルーされがちだったのでしょうか? 当事者と人物関係が、込み入っているから??
けれども、そのような難解さを含む一方、勝気な美人の姉、伊都、細川勝元、山名宗全といった人物は、十二分にキャラ立ちをしています。蜷川新右衛門(『一休さん』のあの人の息子で、蜷川親元という)のコラムも、時代背景をわかりやすく説明してくれています。
ただ、権力者たる大人達が、見かけ以上に迫力がありすぎて、肝心の伊勢丸が、まだ本領を発揮できていないのが、当たり前とはいえ、少し残念。
好奇心旺盛ながらも、生真面目な彼が、どのように成長し、変わっていくのか? とても楽しみなお話です。私は2巻も買いますよ。それでは。
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コメント
時代物で「名前が似てる」のはいわゆる『通字』で一族の嫡流に近い証、みたいなところもありますのでねぇ(^^;)
(慣れれば、逆に「この字のついてるのは○○氏の人」って分かるんですが)
伊勢盛時(本人は生前に『北条』と名乗ってない)はかつては素浪人みたいに言われてましたが、伊勢氏の生まれであることを明記されてるだけでも、ゆうき先生が最新研究を踏まえて描かれる予定なのが伺えます。
時々外来語が混じるのは自分も微妙ですが、でも「難しすぎ」と敬遠されるのを和らげる意味もありそうで、そこも「見極めの苦労」を伺えます。
雑誌の方では、伊都の結婚が近そうで、この縁組みが非常に新九郎の将来に関わるのでお楽しみに!!
投稿: 天里友香 | 2018年11月26日 (月) 19時26分