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2018年11月16日 (金)

『憂氣世繪草紙』(米倉斉加年・大和書房)の感想

『憂氣世亜繪草紙』(米倉斉加年・大和書房)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 こちらは、米倉斉加年の画集です。奥付によりますと。
 
 憂気世絵草紙
 一九七八年四月一〇日第一刷発行
 少々古いのですが、それでもインパクトは充分にあります!

 二部構成のようになっていて、前半は黒メインのペン画? それに少々、朱色が塗り加えられています。山高帽をかぶった、受け口気味、ボサボサ長髪の男と、全裸もしくは裸に近い恰好をした、痩せた女が、様々なことをしています。エロいっちゃエロい、のですが、何の風刺? それとも、遊び? なのか、わかったような、わからないような・・・・。そんな、もぞもぞする感覚を与えます。いや、もしかして、そのあいまいさ、複雑さが目的なのかなあ?
 後半は、下絵のシリーズであるそうです。「模造紙に鉛筆で描いたもの」で、「仕上げは酉の内という和紙に水彩で着色しました」とか。これは、米倉さんの解説文の引用です。
 シンプルながらも、あのイラストの特徴が最大限に表れています。すなわち。

 痩せ細った、日本髪の女(日本髪でない人もいますが)。
 美女というよりは、年齢不詳。乱れ髪、垂れた乳房など、リアル。
 焦点のぼやけた瞳、閉じた目。
 シンプルそうでいて、かなり精妙な描き方。

 
 要するに、「気持ち悪い」と、嫌いな人からは、とことん敬遠される、米倉斉加年の個性がダイレクトに表現されています。私も、子供の時に見て、夢でうなされるほどに、怖かったことを覚えておりますが。
 しかしながら、良くも悪くも、情念が裸になっているなあと、思います。それに、これは私だけかもしれませんが、日本髪でなくても、どことなくレトロな趣を感じるのです。
 ただ、きれい、精緻なだけの絵ではなく、情念や感覚のるつぼにたたきこまれるような、そういう不可解な興奮を味わいたい方に、お勧めいたします。
 私としては、ラストページの、「日本の戦後のヴィナス」が、もっとも衝撃的でした。どう表していいものやら、ため息が出るばかりです。それでは。

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