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2021年9月に作成された記事

2021年9月28日 (火)

『宇喜多の捨て嫁』(木下昌輝・文藝春秋)の感想(追記)

 前回の『宇喜多の捨て嫁』(木下昌輝・文藝春秋)の感想の追記分です。こちらも、ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 こちらの短編集の中で、私は「ぐひんの鼻」が一番気に入っておりますが、もし、どなたかに勧めるのであれば、やはり、表題作の「宇喜多の捨て嫁」ですね。
 先ほど、軽く読み直してみたのですけれども、「五逆の鼓」も通じている部分も発見して、驚きました。やはり、すべてを読んだ方が、宇喜多直家の人となりが浮き彫りになっていくようです。

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2021年9月25日 (土)

『宇喜多の捨て嫁』(木下昌輝・文藝春秋)の感想

 書籍『宇喜多の捨て嫁』(木下昌輝・文藝春秋)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 今回、私は前のめりに書きますから、辛辣な表現になるかもしれません。できましたら、作者様とその信奉者の方は、どうぞご覚悟いただけますように。ただし、誹謗中傷は受け付けません。

 収録されているのは、次の6つの短編です。

 宇喜多の捨て嫁
 無想の抜刀術
 貝あわせ
 ぐひんの鼻
 松之丞の一太刀
 五逆の鼓

 特に、「宇喜多の捨て嫁」は、2012年にオール讀物新人賞を受賞した、有名な作品ですね。
 まあ、短編を別個に読んでもいいのですが、どれも、宇喜多直家にまつわる血生臭いエピソードを描かれており、緩くつながっていますので、通しで読んだ方が、わかりやすいと思います。
 あらすじは省略! では冷たいですから、超簡単に述べますと、戦国時代の梟雄、宇喜多直家をめぐるピカレスク時代小説です。
「宇喜多の捨て嫁」では、宇喜多家の四女、於葉が、非情な父に敵意を抱きながらも、嫁ぎ先の安藤相馬と、ひそかに争うお話。
「無想の抜刀術」、宇喜多家の八郎(後の直家)は、母とともに貧困にあえぎつつも、生まれながらの恐ろしい剣術の才の持ち主であった。
「貝あわせ」、妻や娘達と一緒に、貧しいながらも平和に暮らしていた直家ですが、主君の浦上宗景は、舅の中山信正、さらには祖父の仇、島村盛実までも殺害するように命じます。挙句には、直家の妻子まで……。
「ぐひんの鼻」、浦上宗景は、戦上手で有能な部下にもめぐまれた直家を恐れ、はかりごとをめぐらしますが、失敗続き。最後の手段として、ぐひんの鼻という危険な岩の上に、彼を誘うのでした。
「松之丞の一太刀」、浦上宗景の息子、松之丞は、直家の三女、小梅と結婚しますが、浦上家筆頭家老の直家の戦果はとどまりません。浦上側の軍監や家老が宇喜多家に入って内部分裂をねらっていたものの、直家に世継ぎが誕生。松之丞は奇策を用いて、舅を暗殺しようとします。
「五逆の鼓」、江見河原源五郎は、亡き父から、すばらしい鼓を受け継いでおり、浦上誠臣の家臣でありながら、楽士になりたいと、ひそかに望んでいました。折しも、宇喜多忠家とその部下に篭絡され、主君とその子を殺しますが、その代価は、母の刑死と、五逆とののしられることでした。けれども、はかりごとを続ける、宇喜多直家の身も、安泰ではなく……。

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2021年9月22日 (水)

『真田魂』2・3巻(重野なおき・白泉社)の感想

 四コマ漫画『真田魂』2・3巻(重野なおき・白泉社)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 まさか、2巻の感想もアップされていなかったとは! 遅くて、ごめんなさい。
 なぜか、私はつい最近まで、あまり漫画を読んでいないことに気づいて、急いで取り寄せたのですが、取り分け、重野なおき作品は実におもしろかったです、
 まず、あらすじというか、時系列を説明いたしましょう。
 2巻は武田家の滅亡に続いて、本能寺の変が起こり、真田家は天正壬午の乱に翻弄されます。北条、徳川、上杉と、主を変え、懸命に生き残りを図る一族ですが(信繁は人質が役目のように!)、どうやら、徳川との対決は避けられない模様。上杉景勝が味方になってくれますが、劣勢なのは変わりなし!
 3巻は、第一次上田合戦の始まりと、思いがけない終結まで。真田と徳川の争いを突いて、北条までが大軍を送りだし、要衝の地、沼田城をねらいますが、矢沢頼綱が応戦、撃退し、徳川軍もまた急に退却。その陰には、豊臣秀吉の勢力拡大があったのでした。徳川は秀吉に臣従しますが、北条は小田原評定で、まとまらないうちに、名胡桃城事件が起きます。これに秀吉は怒り、北条との戦いは避けられない形に。

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2021年9月19日 (日)

書籍「タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物」(キャサリン・ハーモン・カレッジ 高瀬素子 訳 太田出版)の感想

 書籍「タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物」(キャサリン・ハーモン・カレッジ 高瀬素子 訳太田出版)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 海洋生物や雑学、生態学好きの方に、特にお勧めしたい、タコに関するノンフィクションものです。
 この説明とタイトルで、あらすじは、ほぼ言い尽くしました。しかしながら、説明されている分野は、極めて広いです。
 もちろん、最大の原因は、タコが身近にいながら、実に謎に満ちた生き物であるからなのですが、作者様の好奇心と構成力が半端でないところも大きいと、私は思います。
 まず、一、ニ章で、タコ漁や料理について言及してから、習性、能力、謎、人間社会への応用、環境変化によるタコの危機と、幅広い内容を、専門用語を多用せず、わかりやすくまとめています。
 しかし、難解な部分は含まれていますし、大勢の専門家の研究成果もそうですが、名前が多すぎて、眠くなったり、戸惑ったりしました。このことは、欠点といえるでしょう。

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2021年9月16日 (木)

『〆切本』(左右社)の感想

 書籍『〆切本』(左右社)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意下さい。

 タイトルのとおり、〆切をテーマとした、アンソロジー本です。漫画が3本、それ以外は散文。エッセイもありますが、小説の後書きっぽいものが多いかな? 樋口収の作品は、研究論文みたいでした。
 内容は5部に分かれています。

 I 書けぬ、どうしても書けぬ
 II 敵か味方か? 編集者
 III 〆切なんかこわくない
 IV 〆切の効能・効果
 V 人生とは、〆切である

 各章のタイトルで、あらすじは説明し尽くされているでしょう。
 作者は、明治頃から現在までの、有名な作家、著述者の方々です。私は不勉強で、知らない方もいらっしゃいますが。

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2021年9月14日 (火)

『新版 人生の指針が見つかる 座右の銘1500』(別冊宝島編集部)の感想

 宝島UGOI文庫の『新版 人生の指針が見つかる 座右の銘1500』(別冊宝島編集部)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意下さい。

 私がこの本を購入したのは、いきなり、身内二人が闘病生活を始めたからです。やるべきことは、わかっていますし、落ち着かなくてはいけないと、頭では理解していても、やはり不安。なので、正論異論、古今東西の名言で、平静さを取り戻そうとしたのです、が。

 すばらしい名言が(しっかり数えていませんが)1500もあるにも関わらず、読後感は、極めて薄味。ボリューム的には満足ながらも、ベーシックなコンソメに、中華の味わいと、日本の薬味や出汁を入れて、万人受けをねらったために、返って印象が薄れてしまった、残念なコスモポリタン・スープというべきでしょうか。

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2021年9月 9日 (木)

『政宗さまと景綱くん』3・4巻(完結)(重野なおき・リイド社)の感想

『政宗さまと景綱くん』3・4巻(完結)(重野なおき・リイド社)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 4巻にて、見事に完結いたしました。正直言って、少し寂しいですけれど。それでも、伊達政宗と片倉景綱という、「最高の主従」(4巻の終わり、作者様の言葉より)が、しっかり描かれていて、東北地方における戦国時代を学び、知る上では、とても役立つと、私は思います。
 あらすじとしては、3巻が、伊達軍圧倒的不利の中での人取橋の戦いの経緯と、ライバルたる芦名家の動向(世継ぎ問題と、佐竹家の介入)、西の豊臣秀吉のすさまじい圧力、伊達軍と最上義明の衝突を回避すべく、義姫の奮闘、ですね。
 そして、4巻が摺上原の戦いで、最大の敵であった、芦名家との決着。落ち着いたと思いきや、政宗の弟、小次郎との賭けた戦い。ようやく、大権力者となった豊臣秀吉に、政宗は誤解を受けないように臣従し、関ヶ原、大坂夏の陣と、激しく戦いますが、景綱はついに……。巻末には、(何だか愛されキャラになったっぽい)政宗の老年の様子が。

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2021年9月 5日 (日)

『サマーウィンド』(倉田悠子・星海社)の感想

『サマーウィンド』(倉田悠子・星海社)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 くりいむレモンの倉田悠子=稲葉真弓によるノベライズも、第5段になりました。今回は、帯カバーでは、「人魚姫」「ファンタジック」と、説明されていますが、私の読後感としては、「ホラー」「ミステリアス」に近いかと。
 あらすじとしては、最愛だった彼女、弥子の一周忌を目前にして、主人公の青年、陽は、東京からバイクで疾走していきます。九州のリゾート地で、偶然出会った、不思議な美少女、美奈に心惹かれ、肌を合わせますが、体と裏腹に、心はどこか落ち着きません。いよいよ、謎めいた言動を繰り返す美奈。不可解に思いながらも、陽は弥子の死の経緯を語ります。すると、美奈は涙を流して、告げるのでした。

 

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