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2022年9月24日 (土)

『新九郎、奔る!』6,7巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想

 コミック『新九郎、奔る!』6,7巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 6巻では、荏原における、境目争いと、それと連動するかのような、あの男装の姫、つると新九郎の恋の顛末が語られます。
 7巻は、現在の新型コロナウイルス肺炎の感染拡大とオーバーラップするかのような、京での疱瘡、麻疹、赤痢の流行と、それらによって命を落とし、運命を変える人々の経緯が語られます。
 それでは、6巻のあらすじですが、西荏原の伊勢盛頼と那須家との間に起こったものでした。戻って来た新九郎は、格上の、庄元資の力を借りて、双方を和解させます。
 ところが、偶然にも、つるの水浴姿を見てしまい、大いに動揺(ときめき?)。
 さらに、新九郎の紹介と、皆の親睦を深めるため、宴会を企画するのですが、父の盛定が贈答などで浪費してしまい、すっからかんであることが判明。これも、義母の須磨の、タイムリーな差し入れのおかげで、何とかなりました。
 しかし、宴会の際、つるが見違えるような美女になって、やって来ます。それに触発されたか、盛頼が意味深な一言を。新九郎は動転し、馬屋で彼女と二人きりの時、率直に思いを伝えます。つるも新九郎に好意を寄せて、情熱的な秘密の時を過ごしたのでした。
 翌朝、陶然としていた新九郎に、盛頼は、那須家の人質として、つるが嫁いでくることになったと伝え、新九郎の恋は爆散。
 7巻は、家臣や家来達の思惑をよそに、新九郎は失恋の痛手を埋めるかのように、領地経営や文字を教えることに熱中します。
 一方、京では疱瘡がはやり始めて、大勢の犠牲者が出ます。伊勢家でも、弥次郎が発熱して疑われますが、こちらは麻疹の方でした。看病していた須磨は感染して、落命します。
  父からの知らせを受けて、京へ向かった新九郎でしたが、街中のむごい状況に驚きます。さらに、帝、伊勢家で養育している春王丸、その父、将軍義政、母の日野富子と、次々に病に倒れてしまいます。新九郎は、父に代わって仕事をこなしていましたが、春王に気に入られてしまい、荏原に帰れないことに。その間、実母の浅茅に会いに行った時、応仁の乱の西軍総大将、山名宗全が衰弱していること、東軍の細川勝元もまた、乱の終結に苦労していることを思い知るのでした。
 やっと、荏原に戻ってみれば、大雨で水浸しのため、米の収穫は望めそうになく、また借銭の上乗せに。細川勝元は隠居し、その上、伯父の伊勢貞親が……。



 次から次へと、トラブルもしくは、予想外の出来事が起きて、新九郎が奔走させられる、という感じでした。
 政治と経済(広義には、警備もかな?)を同時にこなしていかなければならない、領地経営の難しさが、本当によくわかりましたよ。
 私が子供の頃に読んだ戦国時代の本では、領主や大名は、戦に勝てさえすれば、あとは、ぜいたく三昧の生活が送れるように思わせていましたから、私は理解力がなかったなと思い、恥ずかしいです。
 まあ、私はやっぱり、戦に巻きこまれさえしなければ、庶民がいいです。
 その中でも、つると新九郎の恋の顛末が、もっとも印象に残るエピソードだと思います。
 結果的に、彼女は西荏原の伊勢家と、那須家の和解のために、盛頼の妻になるわけですが、それは宴会の別室で、重鎮達によって決定されたらしいです。
 だとすると、即座につるへ報告されたのでしょうか?
 ならば、新九郎の告白に、つるは、「なんとかわゆいお方だこと。」と言って、抱きついてくるのですが、すでに、盛頼と結婚することがわかって、やっていたのかな? 結構、したたかちゃんなのかも、です。
 また、あらすじでは省略しましたが、古河公方と関東管領で、江戸城守、太田資長が登場。絶対に、何かやってくれそうです。
 最後に、西軍になってしまった伊勢貞藤ですけれども、山名宗全と連絡を取ったり、新九郎の身の安全を守ったりと、今までは貞親、貞宗らに隠れて目立ちませんでしたが、有能で気が利くところに、少し驚かされました。今後も、様々な人物の活躍を楽しみにしております。それでは。

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