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2023年2月に作成された記事

2023年2月26日 (日)

『背徳のボルジア家 上・下』(マーカス・ヴァン・ヘラー 村杜伸/訳 富士見ロマン文庫)の感想

 富士見ロマン文庫のNo.117、118『背徳のボルジア家 上・下』(マーカス・ヴァン・ヘラー 村杜伸/訳)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 今回は、官能歴史小説です。しかも、私の大好きなルネサンス時代ですから、読んでいて楽しく、ワクワクしました。
 あらすじは、チェーザレ、ルクレツィアの兄弟と、その父親であるロドリーゴ枢機卿(後の教皇アレッサンドロ六世)の愛欲図と、彼らのボルジア家の盛衰をからめた物語です。ボルジア家の三人については、皆、あまりに悪名高いので、私が説明するまでもないでしょう。
 とにかく、表向きは、よく知られている歴史のとおりに展開していきますが、その裏では、チェーザレとルクレツィアの間では兄妹姦が、さらにはロドリーゴとルクレツィアもまた、相姦関係にあって、彼らの敵とも……という、凄絶な色情絵図が描かれています。
 まず、私的にいただけない点を挙げますと、最初の方で、ロドリーゴはルクレツィアを、「チビッコ娼婦」と、心の中で呼んでおり、さらに、説明文では、彼女の尻を「ヒップ」と、表現しています。歴史物において、それらは、ないでしょう。大いに萎えました。
 もう一つ、枢機卿を、「すうきけい」と、ルビがふってあるのですが、間違ってはいないのですけれども、「すうききょう」の方が、すんなり読めと思うのですけどね。

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2023年2月19日 (日)

『犯されて』(アタウラー・マルダーン 広瀬順弘/訳 富士見ロマン文庫)の感想

 それでは、富士見ロマン文庫No.20『犯されて』(アタウラー・マルダーン 広瀬順弘/訳)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 刺激的なタイトルですが、原題は『Kama Houri』、あとがきの翻訳者様による説明では、「愛欲の処女神」という意味だそうです。
 残念ながら、原作者については、くわしく述べておられませんが、私はなかなか、前のめりになって読めました。
 主人公はアン・ペンバートンという、1888年8月に享年18歳だった少女で(冒頭は彼女の墓碑銘で始まります)、当時の支配者だったイギリス大佐の長女。舞台は、インド北部のアボタバドからアフガニスタンのカブールにかけて。
 あらすじを申しますと、ある日、アンは窓外で、たくましいアフガニスタン人兵士が上半身を鞭打たれるのを目撃し、異様に興奮してしまいます。彼こそは、ヤクーブ・カーンで、アンの心や人生を大きく揺さぶることになった男性でした。
 まもなく、ヤクーブはアンの馬丁となりますが、乗馬していて障害を越えられなかったアンの失敗に乗じて、乱暴に「犯して」しまいます。アンは屈辱を感じる以上に、ヤクーブのたくましい体、性技に強いインパクトを受けます。同じイギリス人のロビン・マクラウドに求婚されながらも、
人目を避けて逢瀬を続けずにはいられないほどでした。
 しかし、ヤクーブは、どこかへ立ち去ります。懸命に捜すアンを、ロビンが追いすがって来るのですが、理由を知って逆上する彼を、アンは抵抗して殺害してしまいます。ヤクーブは何と、幼い少女と結婚していたのでした。アンとの同居生活も長くないうちに、ロビン殺しの犯人を追っているとのうわさを聞いて、ヤクーブはアンの髪を短く切らせて、兄弟のダウラートと一緒に、逃走していきます。男装したアンは、グーラムという名を名乗り、ヤクーブとダウラートの男色行為を見せつけられたり、ダウラートの愛撫を受けたりしながら、旅を続けます。
 ヤクーブのアンに対する扱いは、だんだんひどくなり、恩人の老族長に彼女を与え、最終的な目的地のカブールでは、売春宿に売り飛ばして行方をくらませてしまいます。
 しかし、アンはイギリス人アーサーから救い出され、ヤクーブは拘束されて、処刑されます。イギリス本国での穏やかな生活を夢見るアンでしたが、帰国目前にして、復讐の魔の手が伸びてきたのでした(冒頭へ続きます)。
 

 

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2023年2月11日 (土)

富士見ロマン文庫がおもしろい!

 富士見ロマン文庫とは、富士見書房から出版された、海外の官能小説作品群です。
 私の持っている最初の本は、『O嬢の物語』(ポーリーヌ・レアージュ 澁澤龍彦/訳)で、昭和58年発行のものです。
 きっと、リサイクル本屋で買ったと思いますが、「今の本屋の店頭で、見たことないな。変わった本だ」と思いながら、すっかり失念しておりましたが、実家に帰った際にこれを見つけ、興味をそそられて、オンライン本屋などで探してみました。
 この富士見ロマン文庫のアピールポイントは、『マタ・ハリの日記』(マーク・アレクサンダー編 秦新二/訳)の折り返しカバー部分の文章によれば、次のとおり。

 ナウでファッショナブルでエロチックな新しい文庫の誕生

 また、封入された宣伝用小冊子によれば。
 
 へんな目で見ないでください。

 だそうです。
 

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2023年2月 4日 (土)

『謎解き浮世絵叢書 月岡芳年 風俗三十二相』(監修:町田市立国際版画美術館 解説:日野原健司)の感想

 書籍『謎解き浮世絵叢書 月岡芳年 風俗三十二相』(監修:町田市立国際版画美術館 解説:日野原健司)の感想を申します。ネタバレが含まれておりますので、ご注意ください。

 以前にご紹介した『魁題百撰相』と同じ出版社から発行されている、月岡芳年の別の浮世絵シリーズです。
 こちらの方が、凄惨、残酷の描写がなく、一般うけするでしょう。
 それで、『風俗三十二相』とは何かを説明いたしますと、江戸末から明治初期までの時代の、いろいろな職業の若い女性を描いた、合計32枚になる、月岡芳年の浮世絵です。
 発行年度は明治21年(1888年)で、時期は目次の順ではなく、バラバラ。一枚ごとの絵に、「いたさう」「ひんがよささう」などの、かわいい&おもしろい題名がついています。

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