« 2023年5月 | トップページ | 2023年7月 »

2023年6月に作成された記事

2023年6月24日 (土)

『殺っちゃえ‼ 宇喜多さん』1巻(重野なおき・リイド社)の感想

 四コマ漫画『殺っちゃえ‼ 宇喜多さん』1巻(重野なおき・リイド社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 今回は歴史四コマがお得意な作者様の作品の中でも、戦国三大梟雄の一人で最恐と言われる大名、宇喜多直家が主人公です。恐らく、今までの主人公の中で、もっともダークかつ陰キャだと思われますが、どんな作品になったでしょうか。無暗に暗い雰囲気なのではないかと、私は危ぶんでいたのですが、杞憂でした。テンポのよいギャグは、健在です。ただ、宇喜多直家の他にも、インパクトの強いキャラクターがいましたね。

 あらすじとしては、後に宇喜多直家となる、利発な少年、八郎でしたが、祖父の能家が島村盛実に城を攻め落とされ、自殺するところから始まります。すべてを失った一家は、備前から備後へ移り住み、豪商の阿部善定の援助を受けながら、生活します。ほどなくして、実父の興家が死亡し、その7年後に、八郎は大名の浦上宗景に仕えることになります。
 やたらと明るくて宴会好きな主君に、八郎は戸惑うものの、初陣で手柄を立てて乙子城の城主に出世。海賊と渡り合いながら、後に宇喜多三家老と呼ばれる、有能な部下も集まります。着実に地歩を固めていった直家でしたが、浦上宗景から、浮田国定を討つべしとの命令を受け、正攻法で戦って勝ちますが、四年もかかった上、大勢の部下の死亡もあり、直家は戦そのものに疑問を持ち始めます。
 二年後、中山信正の娘と結婚し、娘達も生まれますが、さらに八年経って、浦上宗景から仇敵の島村盛実と……義父の中山信正の討伐指令が下ります。直家は即座に応じて、自らの手で中山信正を、次に、島村盛実を謀殺します。結果、妻は衝撃を受けて自殺。直家は、中山、島村の領地をもらいましたが、備中の強敵、三村家と接することに。悲劇的な試練を乗り越えた直家の内面に、暗黒の情熱が宿るのでした。

続きを読む "『殺っちゃえ‼ 宇喜多さん』1巻(重野なおき・リイド社)の感想"

| | | コメント (0)

2023年6月18日 (日)

『むちむちぷりん』(宇能鴻一郎・徳間文庫)の感想

 書籍『むちむちぷりん』(宇能鴻一郎・徳間文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 いやぁ、いきなりの精神的土下座です。正直言って、私の好きなバタイユも、富士見ロマン文庫のいくつかの傑作も、こちらを読書中は忘れてしまうほどのおもしろさでした。
 私的2023年ベストブックの1冊になることは、間違いないでしょう。
 ところが、惜しむらくは、この本は2016年2月発行の「精選版」なのです。名前こそ洗練されているかのようですが、実際は1985年4月刊行の文庫から、7篇を再編集した、「抄本」です。
 だから、ヒロインが外人男性と知り合ったと、語っていましたが、そのお話はなく、おかしいなあと思っていましたが。
 差別的表現など、問題があったのでしょうかね? とてもユニークな小説なのに、もったいないです。
 そこで、私、古い方を探しておりますが、この精選版も今は品切れなのか、高いのですよね。
 
 収録されている作品は、次のとおり。

  ケイバ未亡人
  二人がかりで
  雪のモーテル
  レモン汁
  シュッシュッポッポ
  残らされて
  内助の功

 語りは、「あたし」口調の一人称。子供のいない、専業主婦の、若奥様。夫のことは文中で、「主人」と呼んでいますが、どちらも具体的な名前は出てきません。ゲスト的な課長や部下などは、名字だけでも描かれているのに。これは、読者の想像にまかせるという、作者様の意図の現われでしょう。


 

続きを読む "『むちむちぷりん』(宇能鴻一郎・徳間文庫)の感想"

| | | コメント (0)

2023年6月 4日 (日)

『熾火(おきび) マンディアルグ短編集』(生田耕作/訳 白水社)の感想

 書籍『熾火(おきび) マンディアルグ短編集』(生田耕作/訳 白水社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 また、強烈な小説世界を知ってしまったなあ、というのが正直な感想です。エロ、グロ、リリカルとでも呼びましょうか。
 最初に、いただけない点ですが、ライトノベルに慣れた方には、改行なしで延々と続く、こちらの文体は、戸惑い、あるいは苦痛に思われるかもしれません。似たような文体(あくまで文体。作風ではありませぬ)は、やはり、ドストエフスキーでしょうか。
 私は文章と、それが脳内で創り出すイメージに、波乗りをしているような気分で読了いたしました。いいのか悪いのか、わかりませんけどね。
 あと、作者様のお好みでしょうが、女性がひどい目にあう筋が多いので、強くフェミニズムを追及されている方には不愉快に思われるかも。
 もう一つ、各作品の冒頭で、作品の一部を引用されているのですが、フランス文学にうとい私は、最初の作品「熾火」を除いて、何の小説か評論なのか、さっぱりわかりませんでした。できれば、翻訳者様も、簡単な説明があったらわかりやすかったろうにと、思いました。

 収録作品は、次のとおりです。

 熾火
 ロドギューヌ
 石の女
 曇った鏡
 裸婦と棺桶
 ダイヤモンド
 幼児性

 では、各作品のあらすじと感想を申しましょう。

 

続きを読む "『熾火(おきび) マンディアルグ短編集』(生田耕作/訳 白水社)の感想"

| | | コメント (0)

2023年6月 3日 (土)

『となりの怪異談 身近なゾッとする話』(小林薫・ぶんか社)の感想

 コミック『となりの怪異談 身近なゾッとする話』(小林薫・ぶんか社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 この本、私は先月に読了していたのですが、なぜこんなに感想アップが遅くなったかといいますと。
 夜に、あらためて目を通すのが怖いから! です。
 怖いもの好きで、耐性のあるはずの私がこうですから、苦手な方はご注意ください。
 まあ、表紙からして、かなり……ですから。

 あらすじというか、中味を説明いたしますと、様々な場所、年齢、職業の方々(たぶん雑誌の投稿者?)による、怖い体験談を漫画化されたものです。
 ほぼ2ページと、シンプルかつ簡潔にまとめられていますから、どこから読んでもおもしろく、しかも総数が90を越えているという、充実した内容です。
 その怖い体験の分類は、心霊的なものが大半ですが、中には不可解? なものもあり、お笑いオチさえも。
(語りだけでなく、オチもあるのですよ)
 ただ……霊能者さんが現われもせず、後味の悪いエンドになることも。

続きを読む "『となりの怪異談 身近なゾッとする話』(小林薫・ぶんか社)の感想"

| | | コメント (0)

« 2023年5月 | トップページ | 2023年7月 »