『新九郎、奔る!』13巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想
コミック『新九郎、奔る!』13巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
前将軍の庶兄である、堀越公方こと足利政知に、双生児が誕生しました。そのうちの一人が、茶々丸と名付けられました!
これで、1巻の冒頭の伏線が明かされましたね。
ここで、このお話の折り返し点になるのでしょうか?
あらすじとしましては、上記のとおり、足利政知に双生児の世継ぎが誕生したわけです。
新九郎の方は、家の借金返済のため、超節約暮らしをしていましたが、家来に多額の負債を打ち明けられ、ついに、分一徳政を申請します。
この分一徳政とは、借銭の五分の一を幕府に納めて申請し、認められれば、借金がすべて帳消しになるという仕組みです。結果的に、伊勢家の借金は、きれいになくなりました。
さらに、新九郎は、細川政元に呼び出されて、足利政知が今の地位を降りさせた上で、幕府は、古河公方こと足利成氏と和睦が可能かと、質問されます。言葉を濁す新九郎でしたが、前将軍の義政らが動いて、上杉顕定に伊豆国を返上させて政知に割譲し、代わりに公方の地位をあきらめさせ、ついに成氏との和睦が成立しました(都鄙〈とひ〉和睦)。
伊勢家内では、新九郎の姪にあたる、かめの遊び相手として、あの甘い物好きののんびり屋、小笠原政清の娘、ぬいが選ばれます。
将軍家で、現将軍の義尚が妻である日野家の姫を追い出し、またもや髻を切り、母の日野富子と不仲になって、伊勢家に居場所を移しました。
そんなゴタゴタがある一方、ようやく、新九郎は申次という役職を得ます。慣れない仕事に右往左往しますが、念願の結婚話がやって来た、のかな?
では、いただけない点としては、作者様のせいではなく、わかりやすく説明されておりますが、堀越、古河、幕府の関係が、もう難しいです。
しかしながら、特に戦闘を思わせる描写はないものの、「茶々丸」の名前で、ストーリーが、ぐぐっと、引き締まったような気がします。
今のところ、新九郎は、生真面目な好青年ですが、1巻では……。彼の成長? 変転? ぶりは、これからも目が離せませぬ。
少し残念だったのは、父親の影響力が絶大すぎる、現将軍の義尚ですが、女性をもてあそぶようなことをしております。
しょせん、血は争えぬ、ということでしょうか。
これに対して、義政ではなく、母の富子が、「女子は物ではないのですよ。生きて行かねばならぬのです。」と言って、義尚をいさめたところに、胸がすく一方、彼女を見直しました。
地味な流れながらも、重要なテーマや伏線が含まれているような感じがしましたね。本当に、戦や争いごとだけが歴史ではないということを、思い知らされます。お勧めですよ。それでは。
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