『ガミアニ伯夫人』(アルフレッド・ド・ミュッセ 須賀慣/訳 富士見ロマン文庫 No.11)の感想
書籍『ガミアニ伯夫人』(アルフレッド・ド・ミュッセ 須賀慣/訳 富士見ロマン文庫 No.11)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
何と、この本は巻末の翻訳者様(恐らく)の解説によりますと、フランスのロマン派詩人、ミュッセの描いた好色文学、もとい、官能小説の古典です。さぞや、表現も慣習も現実離れ&現代離れ(?)していて、読みにくいだろうなと、私は危ぶんでおりましたが、とんでもない間違いでした。
ミュッセと翻訳者様に、精神的土下座をさせていただきます。
実は、前回レビューした、ヘンリー・ミラーの『オプス・ピストルム』よりもエロくて、さらにおもしろくて、楽しませてもらいました。
ただ、いただけない点がありまして、この本、実は2部構成なのです。前半は、『ガミアニ伯夫人』なのですが、後半は、『美女ジュリアの手記』(アンドレア・ド・ネルシア)となっており、まったくの別作品です。いいえ、別にいいのですが、表紙には、後者のタイトルさえも載っていないのに、中表紙にようやく、『ガミアニ伯夫人 他一篇』と、印刷されています。
加えて、巻末の富士見ロマン文庫シリーズ紹介では、最後のページはタイトルしかないし……。
さらに、『ガミアニ伯夫人』には、むっちりぽっちゃりの、古典的美女満載の刺激的な挿絵がいくつか載っていて、視覚的にもかなり楽しませてくれるにも関わらず、画家かイラストレーター様の名前、出典など不明なまま、私が惜しがっておりますと、これもまた解説に、20世紀初頭にパリで出版された、ブリュッセル版の復刻版で、ドヴェリアという画家様のものだそうです。
内容はいいのですが、不親切仕様ですなあ。
それでは、まず、『美女ジュリアの手記』(アンドレア・ド・ネルシア)の感想を申しましょう。修道院で女性同士の関係を知ったジュリアは、その美貌ゆえ、男性が放っておきません。修道院と小父夫婦から逃れ、様々な男性と経験を重ね、ついには、理想の男性器を持つ、すばらしい男性と結ばれるのでした。
巻末の解説ではほめられていますが、私はちっともおもしろくありませんでした。女の子の好きなおとぎ話に、官能要素をプラスしただけだからです。
『ガミアニ伯夫人』のあらすじと登場人物は、美貌のガミアニ伯夫人は、ある舞踏会で、ファーニーという処女を口説いて二人きりで密室へ連れていき、彼女の衣装を脱がせ始めます。物陰から、青年アルシッドは茫然と見守ります。成り行き上、三人の行為に。
やがて、ガミアニは、とんでもない処女喪失体験、修道院での院長、修道女達の、ロバさえも交えた乱交を語り、ファーニーを驚き呆れさせるのでした。その結果、ガミアニが彼女に、快楽の頂点=苦痛の極致に導こうと……。
性愛に貪欲な熟女ガミアニ、清純ながらも好奇心旺盛のファーニー、一応登場も活躍もするけれども、ほぼナレーターのアルシッドと、シナリオ形式でエロチックなエピソードが語られます。学生時代に、友達同士で盛り上がった、男子禁制のお話(想像してください)に、少しノリが似ていて、でも、こちらの方が数千倍過激でした。
そういうわけで、ミュッセ? 古典? と身構えずに、どんなものかなあと、気楽に読めるし、読みやすく、ドキワクするお話でした。今までに読んだ富士見ロマン文庫シリーズの中でも、トップクラスのおもしろさでしたね。お勧めいたします。それでは。
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