『絢爛たるグランドセーヌ』19巻(Cuvie・秋田書店)の感想
コミック『絢爛たるグランドセーヌ』19巻(Cuvie・秋田書店)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
19巻は、学内振付コンクール決選の模様と結果、加えて、今までのバレエ漫画であまり言及されなかった、極めて切実な問題が取り上げられています。今まで、奏は順風満帆に夢に向かって進んでいる感じでしたが、山あり谷ありの道は避けられないようです。
あらすじを簡単に説明いたしましょう。
振付コンクール決選では、7年生のズーイが出場する「FLOWERS(フラワーズ)」、トビーの演出する「TRIANGLE(トライアングル)」と、個性的かつ見応えのある作品が現れます。まるで、YAGPのようだと言うエヴリンに、奏も同意し、見ているうちに影響されまいと、目をふさぎます。それでも、奏はエヴリン達とともに、「ENCOUNTER(エンカウンター)」を踊りきりました。次に、奏は、七海の踊りを初めて見ますが、レベルこそ高いのに、やはり、楽しそうに感じられません。
審査の結果は、TRIANGLEとENCOUNTERの同時受賞。奏と仲間達は、大喜び。その後、奏は、練習に励む七海と会います。七海は、パートナーと充分に練習ができず、英語が苦手なので、一人きりで練習していたと、反省して打ち明けます。対する奏は、七海の万全モードの踊りが見たいと、言うのでした。
それから、エヴリンが読んだマーゴ・フォンティンの自伝のこと、七海が孤高の人として、皆の間で有名であること、加えて、再び練習を始めた七海は、かなりレベルアップしていました。ニコルズ先生の存在もあり、ロイヤルがバレエ上達に最上の環境であると、奏は感じ入って、校長にスカラシップの相談をします。校長は、保護者と相談させてほしいと、答えるのでした。
さくら、翔子の家庭は、金銭面の問題を無事にクリアしているようです。ドイツ留学中の絵麻は、相変わらず、振付を完全に覚えるのが得意ですが、体に負担をかけない、自分なりの練習に励むのでした。
ニコルズ先生の個人レッスンを受けた後、奏は、先生から、かつて、ロイヤル・バレエ・スクールからロイヤル・バレエ団へ入れなかった、苦い思い出を打ち明けられます。しなくてもいい回り道をせずにすむよう、「あなたは私が導くよ」と、先生は言います。
もしや、ニコルズ先生は引退するのではと、危ぶむうちに、ハーフタイムの休みが来て、仲間達は帰国し、奏はオープンクラスを受けます。そこへ、何とYAGPで知り合った李紫萱が、短期講習生として、やって来ます。また、行動を共にする咲希は、ロンドンで、バレエの指導を続けるべく、就職を目指すと、言います。変わらぬテンションの高さで、レッスンに熱中する紫萱。奏も、彼女らに大いに感銘を受けるのでした。
引退するかもしれないニコルズ先生、ニコルズ先生にあこがれるエヴリン、指導員を目指す咲希、疲れも見せずに全力で踊る紫萱。ラスト近くののページで、奏は、「バレエの向かい方って人それぞれ」と、モノローグで語るのですが、19巻は奏自身の活躍がやや目立たなくなりがちながらも、そういうお話なのだと、思います。
振付をがんばるキーラ、トビー、英語が苦手と本人は自覚しながらも、周囲はちゃんと実力を評価している七海なども加えると、なかなかディープなバレエ世界です。この上、あらすじでは省略しましたが、翔子には翔子の事情があります。
今回は、絵麻が思いがけない活躍をしていました。仲間達は、彼女の振付を大いに参考にする一方、あまり自習をしていないことを不審がっていますけれども、れっきとした理由あってのことです。演技の完成度を高めるために、絵麻は、「自己流はダメだ」と、モノローグで言います。また、「闇雲に練習量を増やすよりも 一回一回のレッスンに とことん集中する方が 自分の性にあってる」とも。
最後に、私達にとっても切実な、経済力の問題! これまた、あらすじで省略したものの、奏は両親から、スカラシップなしでは留学させてあげられないと、はっきり告げられています。これは、本当にどうなるのでしょう。ニコルズ先生、校長とも、奏に好意的だから大丈夫、と見なしていいのかなあ?
今回の名台詞は、ラストページの奏の独語。
どんなに疲れていても 踊るのは楽しい
踊れなくなることなんて 今は考えたくないよ
奏を含めて、バレエに燃えている人達、みんながんばって! と、言いたくなりました。お勧めいたします。それでは。
ご協力お願いします。
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