『新九郎、奔る!』16巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想
コミック『新九郎、奔る!』16巻(ゆうきまさみ・小学館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
何人かの重要人物が、思いがけない行動をとる。そんな嵐の前の静けさといった感じがする、読後感でした。
あらすじを簡単に説明いたしますと、武装した新九郎と家来衆は、力尽くで元代官の追い出しに成功します。けれども、新九郎は、甥の龍王丸への家督譲渡に、さらに三ヶ月の猶予を与えました。その間に、将軍の足利義尚が六角高頼討伐に出陣します。緊張する小鹿新五郎側でしたが、膠着状態を改善すべく、新五郎の妻のむめ、さらには甥の竹若が新九郎らの元にやって来て、人質を志願し、滞在することになりました。
一方、おどおどしてばかりいると思われていた龍王丸でしたが、何と、新五郎と直接会ってみたいと、新九郎に申し出ます。そこで、十一月六日、得願寺で会談となります。対面した新五郎は、龍王丸を無能ではないと判断します。
新五郎のやつれように、驚く新九郎。龍王丸は新五郎へ、父のように自分を支えてほしい、と言います。龍王丸が暗愚でないことを察した新五郎は、館に帰りますが、しばらくして体調が悪化し、床に伏してしまいます。重臣の福島修理亮は、新九郎らに一服盛られた可能性を示唆し、孫五郎はそれを信じ込んで激怒するのでした。
また、新九郎は、今川家家督を孫五郎が注ぐと聞き及んで、許し難い約束違反と判断し、家来衆と軍議を開きます。福島も、孫五郎を総大将に当てて、戦の準備を始めます。さらに、来訪してきた、新九郎側の重臣、堀越源五郎を斬首し、両者の対立は避けられなくなりました。
やむなく、病の身をおして、甲冑をまとう新五郎。龍王丸らの座す丸子へ攻め寄せるものの、守りが固くて破れない?
武装した新九郎は、ひそかに清水の知行と会っておりました。この戦の行方と、新九郎の戦略とは?
どうやら、駿河動乱を起こさせる本当の悪人は、新五郎側の重臣、福島修理亮のようです。下剋上を起こしたいというより、言葉巧みに主君に近づいて、その背後から権勢をふるいたい様子。
まあ、新五郎を信奉しているのならば、15巻の新九郎暗殺未遂も、さもありなんと思うのですがね。新五郎の体調が極めて悪いと察するや、孫五郎を担ぎ出すあたり、かなりあくどいと、私は思います。
逆に、新五郎ら駿府方の戦の用意を問いただそうとして斬殺された、堀越源五郎が、実に気の毒です。温厚で真面目な忠臣だったのですけどね。
とにかく、駿府方の孫五郎は、「龍王丸の叔父で、先主の威光を笠に着て、駿河をほしいままにしようとする」伊勢新九郎を討つつもり満々です。
ラストの方のページで、新九郎は必勝の手段を整えているようです。どうなるやら、ドキワクが止まりませぬ。
戦とは、このような大義名分があって、互いの思惑がぶつかり、決裂して起こるものだと、その過程がよくわかります。次巻もとても興味がわきますね。お勧めいたします。それでは。
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