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2024年9月28日 (土)

『真琴♡グッドバイ』(高橋葉介・朝日ソノラマ)の感想

 コミック『真琴♡グッドバイ』(高橋葉介・朝日ソノラマ)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 作者様は夢幻紳士シリーズで有名ですけれども、恐らく、そちらが始まる前、シリアスかつデフォルメの少なくなる、今の画風との間に発表されたと予想される、このラブコメディが、私はとても好きです。
「高橋葉介でラブコメ!」と、ご存じでなかったファンの方は、驚かれるかもしれませぬ。小さなポイント的表現や小物において、ダークまたはブラックな雰囲気はあるものの、作風も登場人物達も、もしかして、作者様自身をも(?)、スカッと、笑い飛ばしているかのような明るい爽快さが、私にとってたまりませぬ。

 と、書いておきながら、同時収録の「たった一人の日本人」の感想から参ります。こちらは、タイトルとは異なる、独立した短編漫画です。
『日本沈没』のパロディというより、筒井康隆の『日本以外全部沈没』に似た感じがしました。田中一郎という平凡な会社員の青年が、ビールスの蔓延により日本人が皆死に絶えてしまったため、アメリカへ連れて行かれます。珍獣あつかいされるのに飽き飽きした田中は、切腹させられかける直前、パンデミックにより、世界中の人間が死滅。田中は飛来した宇宙人に助けられ、これ幸いとばかりに、嘘八百の日本人伝説を書き上げるのでした。
 本当に、ぐうの音も出ないほど、日本人の島国根性をパロディ化した、ブラックコメディです。
 さて、『真琴♡グッドバイ』のあらすじです。ヒロイン大道寺真琴は、画家志望の学生ですが、その熱意に反して、画力が足りていません。挙句の果てに、やけ酒をあおっては、高いところに登って奇声を発したり、飛び回ったりする、酒乱癖ができてしまいます。それでも、真琴は、心優しいながらも、頭がお花畑の美少年、寺島薫と知り合い、また、母親からの強制見合いによって、暑苦しい熱血会社員、石渡正義にプロポーズされます。この好対照な二人によって、真琴は翻弄されるわけです。
 石渡は社長の一人娘にたぶらかされますが、その誘惑を突っぱねたために、会社をやめさせられ、小さな電気屋に転職し、バリバリにセールスをこなします。寺島は石渡とも仲良くする一方、暴力団組長の姪の冷子を妊娠させた疑惑を持たれ、石渡の方が間違ってつかまってしまいます。恐れもしないで、組長の脅迫を突っぱねる石渡。そこへ、寺島の兄、楽夫が急ぎやって来て、自分こそ冷子の真の相手であると名乗りをあげ、めでたく結ばれるのでした。
 それでも、マイペースに平和な寺島。石渡は、彼の度胸に惚れこんだ組長につきまとわれ、大迷惑。真琴は今度こそと、大作を描きますけれども、やっぱりボツ。荒れ狂って飛び回る真琴を、二人の男性、暴力団組長は、必死に追いかけていくのでした。

 天然美少年と、昭和的時代錯誤熱血青年に、常識人のようで、実は羽目をはずしまくる、トンデモ(飛んでも?)美少女。この三人の魅力的な描き分けと、アップテンポなエピソードは、本当におもしろいです。
 ただ、真琴は、なぜ中国人っぽい姿格好なのか、タイトルに意味があるのか、といった細かいところは説明されていませぬ。特に、後者ですけれども、真琴は誰とも、何とも別れていないのですけどねえ。常識サヨナラ、キッチリしたストーリー展開も要らないよって、意味なのでしょうか?
それはある……かも。すごろくとか、楳図かずお他ドラマのパロディとか、いろいろ投入されて(?)いますから。
 そういうわけで、堅苦しい日常を、そんなこともあるさと、笑って受け流せる、よいコメディ作品だと、私は思います。お勧めいたします。それでは。

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