『完全版 ウイグル無頼』(横山光輝・小学館)の感想
コミック『完全版 ウイグル無頼』(横山光輝・小学館)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
収録作品は、タイトルと同じ『ウイグル無頼』と『刺客伝』の2編です。
作者様とファンの方に申し訳ないのですが、実は私、300ページ近い長編の前者よりも、50ページに満たない短編の後者の方がお気に入りです。
その理由は、「ウイグル無頼」は、ちゃんとストーリーに起伏もあるのですが、主人公ヘロデに今一歩、魅力を感じないのと、ラストが拍子抜けするほど呆気なかったためです。あらすじとしては、一匹狼の青年が、自らの情念のままに、戦いを挑み(やたらと強い)、周囲の持ち上げもあって、あれよあれよと出世して王位にまでつくのですが……というお話。
さらに、「ウイグル無頼」には、印象的な女性が二人もいます。ハードボイルド系の作者様にしては、珍しいのではないかと思いますね。
一人は、表紙にも描かれている、盗賊団の女で、ヘロデと情を交わし、彼も憎からず思っていたようなのですが、名無しなのですよね。惜しいなあ。
もう一人は、ある王国の女王で、険がなくなった、曹操の姉みたいな顔立ちです。美女ではありますが、彼女の情け容赦のなさは、大勢の敵を殺しまくるヘロデよりも怖いのではないかと、感じられてなりません。
ウイグルの、風変わりで、時としては冷酷な習慣やおきて、人々の価値観を描きたいのか、それとも、ヘロデの自分探しの方なのか、よくわからない点も、少し残念に思われます。
最近のコメント