2010年2月 8日 (月)
漫画文庫本『かつおちゃんとわかめちゃん』(長谷川町子・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレがありますから、ご注意ください。
これは姉妹社版『かつおくんとわかめちゃん』を元に、再編集したものだそうです。割と昔風の絵で、1ページにつき3コマの大きな横長の絵で、1エピソードは4ページ以上続いています。「どうぶつえん」という、カツオ、ワカメ、サザエ、波平の4人が動物園見物に出かけるお話など、一見、年取った波平と若いサザエの夫婦に、二人の子供であるカツオとワカメがついて行っているようです。よく磯野家は、超メジャーとか平凡、平和な一家と見なされていますが、サザエと、カツオやワカメの、激しい年の差は謎めいていますなあ。
「おとしもの」では、落し物をして泣いているワカメを、二人の交番のおまわりさんが一生懸命、世話をしてくれるというもの。今時、あり得ないような、平和なお話です。一番長いエピソード、「きしゃのたび」では、サザエが汽車に乗りこんできたおばあさんに、「あら おばあさん/ここがあいていますよ/おかけください」と言い、おばあさんは、「さようですか/ありがとうございます」。少々引用が長くなりますが、続けましょう。
おばあさん「まごが つくってくれた おむすびです/おひとつ あがってください」
サザエ「では いただきます」(中略)「ほしがきですけど めしあがってくださいな」
ええ、これは、お父さんやお母さんが子供に読んであげるための絵本なのでしょう。下品な表現がないし、大げさな表現かもしれません。わかっていますが、私は、「何ときれいな日本語! 奥ゆかしいやり取り!」と思わずにいられませんでした。昔の人は偉いだなんて、盲目的に思いませんが、お金さえあればいい、自分だけはタダ得をしたいという、現在に広まっている風潮は、まったく恥ずべきものです。
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2009年12月26日 (土)
漫画『サザエさん』13(長谷川町子全集13巻・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレがありますから、ご注意ください。
『サザエさん』13は、朝日新聞に昭和37年5月から昭和38年5月まで掲載されており、姉妹社版37巻から39巻に収録されたものをまとめています。これで、『サザエさん』の感想もラストです。
特筆すべき部分は、姉妹社版37巻(?)に掲載されたであろう、磯野家のご先祖のこと。カツオが、「うちの先祖で有名な人は?」と、たずねてきたので、波平は答えたのです。
「ご維新の頃、磯野藻屑源の素太皆(いその もくず みなもとのすたみな)という人手、お彼岸におはぎを38食べて、大評判になった」
何巻だったか、そのご先祖が波平の夢枕に立ったエピソードがありましたが、外見は波平そっくりでしたね。あれが、藻屑源の素太皆だったのですか。私としては、サザエ、カツオ、ワカメのいとこ、おじやおばについても語ってほしかったですね。伊佐坂一家は、どうなったのやら。
それでも、磯野家には、実は現代人と大きく異なる美質があるのです。すべてのお話を読んだ今だから、申し上げましょう。
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2009年12月12日 (土)
漫画『かつおちゃんとわかめちゃん』(長谷川町子・朝日新聞社【文庫】)①の感想を申します。ネタバレを含みますから、ご注意ください。
タイトルからして、私は、『サザエさん』からカツオとワカメの活躍するエピソードを選んだ作品かと思っていたのですが、これは姉妹社より発行されたものだそうです。およそ1ページにつき、3コマで、6~7ページほどの短いお話が収録されています。絵はやや古い描き方で、『かつおちゃんとわかめちゃん』がテーマで、長谷川さんが、わざわざ、描き下ろしを行なったそうです。
描かれている内容も古ければ、表紙イラストも古く、切れてしまったワカメの下駄の鼻緒を、カツオが真顔でつけてやっていて、ワカメもすっかりお兄ちゃんを頼りにしている様子で、片足を上げた格好で、カツオにもたれてかかっている、という、まあ現在では、めったに見られない、ほのぼのとしたものです。
珍しく、サザエが脇役で、舟、波平の出番も少なく、代わりにカツオやワカメの友達が、大勢登場します。マスオは登場しませんでしたから、サザエが独身の頃のお話でしょうね。
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2009年12月 3日 (木)
漫画『サザエさん』23(長谷川町子全集23巻・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレはあるかもしれませんが、あまりおもしろくない内容かと思いますので、ご注意ください。
『サザエさん』23は、最終巻です。朝日新聞に昭和46年3月から昭和49年2月まで掲載され、姉妹社版67巻から68巻に収録したものをまとめてあります。他に、『町子かぶき迷作』シリーズとして、68巻の巻末に収録された漫画が4本。週刊朝日の昭和30年10月10日号、昭和31年8月10日に掲載され、姉妹社版34巻に収録された漫画が2本。未発表と英訳『サザエさん』と『いじわるばあさん』。文藝春秋漫画読本の昭和38年2月号、昭和39年2月号に掲載され、姉妹社版よりぬきサザエさん4巻に収録された漫画、『意地悪おてつだいさん』と、豪華てんこ盛りの内容です(調べて打つのが、しんどいよ~)。まだ読めていない13巻は、借りられるのでしょうかね? それは私の心がけ次第ということで。
『サザエさん』自体は、おもしろくないわけではありませんが、『いじわるばあさん』『エプロンおばさん』といった他の長谷川作品同様、唐突に終わっています。4コマ漫画の終わり方って、難しいですね。
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2009年12月 1日 (火)
漫画『サザエさん』20(長谷川町子全集20巻・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレですから、ご注意ください。
20は朝日新聞に昭和44年4月から昭和45年5月まで掲載されたのを元に、姉妹社版58巻から60巻に収録されたものを、まとめています。後半(姉妹社版60巻?)で、ご近所の奥様たちを前に、ニワトリの真似をするカツオを発見したサザエは、みっともないと言って出て行きますが、「こうするのよ」と、自分がさらにおかしなニワトリの形態模写をやる、というお話がおもしろかったです。サザエは基本、目立ちたがり屋でサービス精神旺盛のようです。カツオあたりと肉弾戦のケンカをすることもあって、主婦の枠からはみ出しているから、私は好きです。
今頃になって気づきましたが、ナミノ家の主婦、タイコはあまり磯野家と親しくないようです。カツオやワカメがよく遊びに来ていますが、サザエとタイコって、しゃべったっけ? という感じです。
それから、アニメでは、居間に一同勢ぞろいして、めいめいが、「あんなことがあった」「こんなおもしろいものを見た」と、報告し合い、笑ったり、驚いたりなぞしているシーンが多いですけれども、一同がそろうこと自体、あまりありません。あったとしたら、ハイキングなどでお出かけする場合です。
4コマとはいえ、これほどの長編? 長期連載?なのですから、ツッコミどころ満載なのですけれども(太平洋戦争後からの昭和の庶民の生活を調べるのに、最高のテキスト!)、あと2巻分で終わりです。それでは。
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2009年11月24日 (火)
漫画『サザエさん』22(長谷川町子全集22巻・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレですから、ご注意ください。
『サザエさん』22は、朝日新聞に昭和46年1月から昭和48年9月まで連載されたものを元に、姉妹社版64巻から66巻に収録されたのを、まとめたものです。
もっとも印象に残ったのは、姉妹社版66巻(?)に掲載されたのであろう、「地震対策」と題された1本です。サザエが熱心に、地震が起きた時の備えとして、懐中電灯、ミネラルウォーター、缶詰類とまとめているうちに、カツオが、パイナップルも入れようと、缶詰を持って来ます。続いて、カツオは、さきスルメも持参、ワカメも真似をしてトランプ、カツオは漫画と、いつの間にか、深刻そうだったサザエが、にこにこ顔。ワカメは、いくつねると地震は来るのかと、浮かれています。少し離れた場所にいる波平は、うちはすぐこうなると、つぶやいて呆れている、というお話。
この1本だけではありませんが、当時から、人類絶滅や食料危機は叫ばれており、不安がられていたのですね。私は、高度成長期はもっと、のん気で大らかではないかと思っていましたので、意外であり、驚きました。確かに、さしせまった危機、予想される困難には立ち向かい、闘い、備える必要があるでしょう。でも、不安がっているよりは、楽しんだ方が勝ちというのでしょうか。『サザエさん』の根底を流れる、いい意味の開き直り、底なしの明るさが、この漫画が絶大に支持される原因なのでしょう。
大ヒットの秘密は、こういうところにあるかもよ? どう思いますか、クリエイター志望の方々? それでは。
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2009年11月20日 (金)
漫画『サザエさん』21(長谷川町子全集21巻・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレですから、ご注意ください。
朝日新聞に昭和45年5月から昭和46年5月まで連載されたものを元に、姉妹社発行61巻から63巻までを収録したものです。 図書館本の悲しさで、20巻は借りられませんでした。
今回、特筆すべきことはありません。それで、思うのですが、イクラちゃんはこの巻でも赤ちゃんのままです(イクラという名前かどうかも、実は不明。13巻、20巻、23巻を読んでいないから、あいまいですが)。タラちゃんも、しゃべりはしますが、存在感が薄いですね。
むしろ、磯野家の面々でない人々のエピソードがかなりあって、そういうおかしな人たちの言動を、サザエなりマスオなり、カツオやワカメが、のぞいていたり、遠目にながめていたりすることが多いです。新聞の4コマ漫画とは、こういうテクニックは特殊なのでしょうか、それとも当たり前なのでしょうか。私は、たくさんのネタを描かなくてはいけないから、いちいち、一家族にかまっていられないと考え、後者のような気がします。それでは。
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2009年11月17日 (火)
漫画『サザエさん』19(長谷川町子全集19巻・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレがありますから、ご注意ください。
19は朝日新聞に昭和43年5月から昭和44年4月まで掲載され、姉妹社版55巻から57巻に収録されていたものを、まとめているそうです。
目立っていたのは、学生運動のネタが多かったということです。
大学生達がヘルメットをかぶって武装し、デモを行ない、自衛隊か警察隊と衝突するなんて、今の時代では考えられません。
でも、そのバイタリティーは、うらやましく思います。
あの大学生達のようなパワーがあれば、今、上から押しつけられるだけの「政治改革」ではなく、大勢の人達のための「改革」ができたのではないか、と感じてならないのです。それでは。
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2009年11月15日 (日)
漫画『サザエさん』18(長谷川町子全集18巻・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレはない代わり、あまりおもしろくありませんから、ご注意ください。
『サザエさん』18は、朝日新聞に昭和42年2月から昭和43年5月まで掲載されたものを、姉妹社の52巻から54巻に収録したものを、まとめています。感想は、おもしろかったのですけれども、特筆すべきことはありませんね。意味というか、オチがわからない、時事ネタっぽいものは2本ありました。
昭和史の縮図というか、一般家庭史の変遷をである『サザエさん』を読み続けていると、本当に戦後から高度成長期頃まで、生活が劇的に変化したな、と思います。
まあ、サザエを含めた磯野ファミリー全員が、外見上ほとんど年をとっていないから、よけいに感じるのでしょうけれども、ついこの間まで、七輪で料理をし、洗濯板で大汗をかきながら洗濯し、ほうきとぞうきんで掃除し、育児までしていて、「主婦は外で働きたくても働けなかった」のに、ガスや冷蔵庫、洗濯機、掃除機を使う。何巻だったか、サザエは、「電化でひまになっちゃった」と、ヘルパーのパートに出かけていましたよね。
現在の、パソコンやネットの隆盛なんて、大したものではありません。簡便さと低価格はありがたいですが、なかったとしても、生きていけます。
もちろん、私は戦後の生活を知りませんから、テレビや冷蔵庫、洗濯機などの家電を否定いたしません。しかしながら、あの革命的な便利さに浮かれているうちに、非常に大切な何かを忘れ去ったような危うさを感じてならないのです。そんな感覚、私の杞憂だといいのですけれどね。それでは。
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2009年11月 7日 (土)
漫画『サザエさん』17(長谷川町子全集第17巻・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレがありますから、ご注意下さい。
『サザエさん』17は、朝日新聞に昭和41年5月から昭和42年3月まで連載された漫画、及び昭和42年5月2日、昭和43年3月27日い掲載された漫画エッセイを元にして、姉妹社発行の49巻から51巻を収録したものです。
最初に特筆すべきは、姉妹社版50巻?あたりに、「アメリカの旅」と題された、ページ上半分がイラスト、下半分が文章というスタイルの漫画エッセイが載っていることです。しかも、語り手は磯野ファミリーではなく、長谷川さん本人で、妹さんと一緒のアメリカ旅行で出会った印象的な出来事をつづっています。
もう一つの漫画エッセイは、姉妹社版51巻の巻末エッセイだそうで、『サザエさん』が掲載回数5,000回を越えたことにあたって、長谷川さんがその思い出や日常を語る、というものでした。この5ページは、エッセイというよりも、漫画寄りです。新聞連載って、大変なんだなあと、切ない気分になりましたね。
姉妹社版51巻?は他に、家電の恩恵を受けて、暇になったサザエが、ご近所のお金持ちのお屋敷へ、家事手伝いのパートタイムに出る、というのも、印象に残りました。そのうちの主人の名前は、湯水金造(ゆみず きんぞう)といから、笑ってしまいます。
このサザエがお手伝いとして働くエピソードは、かなりたくさんありました。それにしても、サザエは調子がよくて、食い意地が張っています。カツオとそっくりです。だから、この姉弟はケンカばかりしているのでしょうか?
誰が手にとっても、するっと読めて、くすっと、小さく笑えるのだから、やはり『サザエさん』は、とても楽しくて実用的(日常の憂さ晴らしという意味)だと思います。それでは。
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